said 源田





今、何故彼が目の前にいるのか。
知りたくもないし考えたくもない。

「久しぶりだな、源田」

髪は短くなったし少し背も伸びている。
眼帯も医療用の普通の眼帯に変わっている。
それでも一目見ただけですぐにわかった。

「あぁ、そうだな・・・佐久間」

嫌な予感しかしなかった。



数分前、
帰ろうとしていた俺に突然上司からの呼び出し。
長くなっては困るから不動に電話を入れた後指示された部屋に向かった。

その部屋に入ると、そこには彼がいた。
―佐久間 次郎、が
俺は佐久間を見た瞬間、何かが崩れた気がした。
大切な何かが。


そして現在に至る。
佐久間は椅子から立ち上がりながら苦笑気味に呟いた。

「5年かけて、やっとお前を見つけられたよ・・・。」

ハハッと笑った佐久間はとても寂しそうだった。

「見つけたって…別に姿を隠していたわけじゃない。」
「嘘つくなよ。お前も、不動も・・・いきなり・・・勝手に・・・・・・」

俺たちの前からいなくなったくせに・・・。

そのときの佐久間の表情は見えなかった。
けれど少し声が震えていた。そんな気がした。
俺は謝ることも出来ず。
ただうつむき小さくなった佐久間を見つめるだけだった。


佐久間のその姿を見ていると
今度は音をたてて何かが崩れそうになった。









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