Said 小鳥遊




明王と別れてからある所へと足を進めた。
携帯に呼び出しの電話が入っていたから。

明王と会えたのは嬉しかった。
そして同時に悲しかった。

だって私は―――





ギィと重苦しい扉を開ける。見慣れた2人。

「呼び出すなんてめずらしいわね。有人。」
「あぁ、報告があってな。」
「そんなの電話でいいじゃない。」
「まぁそういうな。佐久間、お茶頼む。」
「あぁ」

佐久間と呼ばれた水色の短髪に医療用の眼帯をつけた青年は慌ててお茶を汲む。
コトっと小さく音を経てて私の前にお茶を差し出し有人の後ろに下がる。
そのお茶を一口飲み、有人の顔を見る。
中学から随分と容姿は変わり、ゴーグルなどはもう着けておらず長かったドレッドは短く肩につかないくらいになっている。

「で、報告って何よ?呼び出すくらいだからよっぽど大事なことなんでしょう?」
「あぁ、それがな・・・源田の働いている場所がやっとわかった。」
「え、ほんと?」
「そんな嘘つくわけないだろう。あいつのほうは全くわからないが・・・」

"あいつ"と言われドキッとした。



私は鬼道財閥で働きながら、不動明王と源田幸次郎の捜索の全般を任されている。
財閥での仕事より捜索のほうがメインだけど。

有人は私を信頼してくれている。それを裏切るのは辛い。
でも明王も私を信頼してくれた。
正直どちらも裏切りたくない。そんなの無理なんてわかっているけれど。


「とりあえず源田に接触してみようと思う。おそらくあいつは源田と一緒だからな。」
「そう・・・。」
「どうした?小鳥遊も何かわかったことあるのか?」
「・・・ないわ。幸次郎の件は有人たちに任せるから。私は明王を探すわ。」
「あぁ、頼む。」

それじゃぁ行くわね。それだけ言って部屋から出て行った。
数歩足を進めて振り返る。そして扉に向かって小さく呟いた。




ごめんね有人・・・。
それでも私はあいつを裏切れないから・・・。




有人と明王の辛そうな顔が脳裏に焼きついてはなれない。















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