「不動・・・?不動明王じゃない?」

名前を呼ばれつい振り向いてしまった。
そこにはピンク色の長い髪の毛にスラッとしたスーツ姿の女性。

「っ・・・た、かな・・・し・・・」
「明王!」
「っ!!!」

やばい。しくじった。
驚愕したせいか、つい小鳥遊と名前を呼んでしまった。
後悔していると、小鳥遊が近づいてきて

・・・・・・殴られた。

顔面をグーで思いっきり殴られた。

「ってぇな!なにすんだよ!」
「それはこっちのセリフよ!高校の卒業式以来音信不通で消息不明って・・・何やってたのよ!」
「っ・・・俺にもいろいろあったんだよ!」
「いろいろで馬鹿みたいに心配かけてんじゃないわよ!私だけじゃない、有人も次郎もみんなあんたのこと探してたんだから!」
「っ・・・・・・」

"有人"
その名前が出た瞬間思わずうつむく。
あいつが俺を探しているわけがないだろ・・・。
馬鹿いってんじゃねぇよ・・・。

「小鳥遊・・・頼みがある。」
「なに・・・?」
「ここで俺に会ったこと、誰にも言わないでくれ・・・誰にも、絶対に・・・」
「明王・・・」
「頼む、約束してくれ」
「・・・わかった。その代わり、ちゃんと全部話して。」
「あぁ。今度な。」




このとき俺は心の奥底で淡い期待を抱いていたのかもしれない。

彼が俺を探してくれている、俺は・・・・・・

そう考えてすぐにやめた。
今の俺には源田がいる。あいつは忘れなくてはならない。
もう終わったことだ・・・

いつの間にかそう自分に言い聞かせていた。







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