佐久不
▽結構素直な明王
▽佐久間がS





イライラする。カルシウム不足ではないはず。
イライラに加え心の中で何かが黒くモヤモヤしている。
あの時部屋から出なければよかったのか…。そんなこと今更だが。
部屋から出て体を動かそうなど考えず寝ていればこんなイライラやモヤモヤ感じなかったはず。


10分ほど前――
今日は自主練の日。部屋にいても暇だから少し体を動かそうと部屋を出て階段へと向かっていると、誰かの声が聞こえた。
俺は声の主がすぐに佐久間だとわかった。一応恋人だからな、一応。
声を掛けようと佐久間のさの字が口から出そうになった瞬間気づいた。佐久間の目の前にいる人物に。
佐久間は鬼道といた。まぁ別にそんなことどうでもいい。しかし佐久間は頬を染めながら嬉しそうに笑い、なにやらクッキーのようなものを鬼道に渡していた。
そういえば今日はバレンタインデー。佐久間はずっと鬼道に思いを寄せていた。鬼道も佐久間も幸せそう。
俺はその場を逃げるように後にした。


そして今ベットに腰掛け心に渦巻くモヤモヤと戦っている。
やっぱり佐久間はまだ鬼道が好きなのか。じゃあ何故俺と付き合う?告白してきたのはあいつからだというのに。
考えれば考えるほど意味わかんねぇ。第一になんで俺が佐久間のことで悩まなきゃいけないんだ!?
どうやらモヤモヤは晴れそうになく、俺はベットに身を預けた。

しばらくして寝てしまったらしく丁寧に布団がかけられていた。
起き上がるとベットの隣に人間が座っていることに気付く。


佐「あ、やっと起きたか。布団もかけねぇで、風邪引くぞ?」
不「…なんでいるんだよ。てか勝手に部屋入るな」
佐「別にいいだろ。なんか問題あるわけ?」
不「ある。邪魔。」


軽く足で佐久間を蹴りベットから降りる。
佐久間が部屋に勝手に来るのはいつものこと。ノックという言葉をこいつは知らないらしい。
別に俺はそれに関して何も言ってなかったが今日は違う。出来れば顔も見たくなかったから。
何故?そんなの決まっている佐久間を見るとモヤモヤが大きくなったから。
自然と口から大きなため息が漏れる。
水でも飲もうと一歩足を踏み出すといきなり手首を捕まれ引かれて佐久間の腕の中に収められてしまった。


不「…離せよ」
佐「やだね。お前さ、何イライラしてんの?」
不「してねぇ。」
佐「してるだろ。」
不「してねぇって!」
佐「してるだろ。嘘つくな。」
不「してねぇって言ってるだろ!だいたいお前が…」


口が滑った。佐久間がキョトンとした顔で俺の顔を覗き込み俺が?と責めるように問う。
こうなれば佐久間は俺が答えるまでしつこく聞いてくる。
だから半ば自棄になりながらお前が悪いんだ、と呟いた。


佐「なんだよ、俺なにもしてないだろ?」
不「お前見てたらモヤモヤすんだよ!」
佐「は?なんで?」
不「わかんねぇ…。お前と鬼道が、一緒にいるの見てから…」
佐「鬼道?」
不「……クッキーあげてただろ…」
佐「…あぁ!何、お前見てたの?」

何やらわかったような表情の佐久間。お前見てたの?ってやっぱり見てはいけなかったのだろう。
モヤモヤがまた広がる。次第に大きくなる渦に泣きたくなってきた。つうかもう泣きそう。
訳が分からず溢れそうな涙を必死に堪えていたら佐久間にこっち向け、と命令される。やだ、と言えば無理矢理佐久間のほうを向かされる。
目の前には佐久間の顔、と思いきや目の前にはペンギンの形をしたクッキー。


佐「これお前の。バレンタインだからな。」
不「え、あ…」
佐「ほら、あーん」
不「は?自分で食えるんだけど!」
佐「…じゃ、鬼道にあーんってする」
不「ダメ!…じゃなく、いやダメだけど……」
佐「まさか不動が鬼道に嫉妬するなんてな。」


は?嫉妬?いや、そんなはず……あるかもしれない。いや、ない!ありえねぇ!
嫉妬だなんて…ありえないはずなんだ!


佐「お前、意外と馬鹿だな。」
不「は?ふざけんな」
佐「馬鹿だ。たしかに俺、昔は鬼道が好きだったぞ。ただ今は好きの意味が違うから。」
不「?」
佐「わかんねぇのかよ…俺が好きなのはお前なんだよ。鬼道は大事な仲間。わかった?」


心に渦巻いていたモヤモヤが一気に晴れた。なんかムカつくしピンとこないから、あぁ…と軽く返事をした。


佐「…お前、わかってねぇだろ。」
不「え?」

"だったらわかるまで体にたたき込んでやる。"

次の日、不動はベットから動けなかったのは別の話。













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