『たまには自分からしないと、飽きられちまうぜ?』

余計なお世話だ!と叫んでみせたが、その忠告が頭から離れない。
つまりは俺でも認めいているということ、そう、認めざるをえない。
政宗殿や佐助なら簡単にできることだろうが、俺にはどうしても、難しい。というか恥ずかしい。

「どうしたの幸村君。何かあったの?」

俺はこうして、青空の隣に座って、少し寄り添いあって、話ができれば…。
それで、いい?

「幸村君っ」
「あ、な、なんでござろう?」
「なんだかぼーっとしてるから…何かあったのかなぁって」

少し顔が近づき、澄んだ瞳が俺の目をじっと見つめる。
かぁと頬が熱を持つのを感じ、落ち着かせるために体を少々離す。

「別に、た、たいしたことではござらぬ故…」
「嘘」

その分青空は体を寄せてくる。近い近い、あたる。
ふわりと、彼女の香りが鼻をくすぐる。

「わかるんだよ?幸村君が何か真剣に悩んでいるってことくらい」

俺の目線は自然と彼女が言葉を紡ぐ唇に引き寄せられている。
先程の忠告が耳で響く。脳に訴える。心を揺らす。
少しだけ、顔を近づけて、唇を寄せて、触れて、離れる。
それだけの行為、だが俺には何とも難しい。

「青空…青空は、俺が…」
「うん?」
「俺は、頼り、ない、か?」

いつになく弱い己の声に少し驚くも、止めることのできない己の内の疑問を彼女にぶつけた。
ぶつけられた彼女は一瞬きょとんとした顔をしたのち、ぷっと吹き出す。

「な、なんで笑うのでござるか!」
「ご、ごめんごめん…なんだか、幸村君が弱気でいるのが珍しいから」
「よ、弱気?」
「うん、だって、そんなこと聞くから…私は幸村君を頼りないって思ったことは、一度もないよ」

はっきりとした物言いだが、彼女の俺を見つめる瞳はとても慈愛に満ちている。
固く握っている俺の拳を青空の柔らかな手がそっと包み込んだ。

「私のことを守ってくれて、私と同じ目線に立ってくれて、幸村君は私にとって一番近い存在だよ」
「っ…青空!」
「きゃっ」

おぬしがそういうことを、そのような笑顔で言うから俺は…青空を護りたいと思うのだ。
この腕の中にすっぽりと収まってしまうほど小さな、青空を…。

「青空、俺はずっとずっとおぬしの傍にいる!…青空は、俺が護る!」

心の底から言いたいことをまくしたてるように伝えたら、彼女は顔をあげて微笑みを見せてくれてから、少し背伸びをした。

「ありがとう、幸村君」

言葉を噤むために緩やかに動いた唇が一度線を結んでから、俺の頬に触れた。



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