ちゅぅと彼が私の中指を軽く吸った。
その顔は至って真剣そのもので、わけもわからず彼の行動に頬を染めるばかり。

「も、元親、さん…?」

大好きな人の大きく力強い手を払いのける道理など持ち合わせていない私は、ただ私の指にキスをし続ける彼が何か言ってくれるのを待つ。
中指だけじゃない、人差し指、薬指、小指、親指、ついでに反対の手も。
まるで私の反応を誘うように指を這う、少し荒れた唇。

「んっ…」

ぴくりと体が、指先からの刺激に震える。
大して強い刺激ではないのに、体が、心が震える。
合計10本の指に口付けた元親さんは、ゆっくりと顔を上げる。
アクアブルーの瞳と赤い唇が、私の神経をすべてそこに持って行く。

「…青空の全部は俺のモンだ。勿論、指先までな」

そう宣言すると、再び彼は私の指に口づける。
指が敏感になっているのか、先程よりも強い波が私に押し寄せてくる。
人差し指、中指…私の利き手に一通りキスをすると、彼は再び顔を上げた。

「だから、俺以外の男を触るんじゃねぇ。お前が触れていいのは、俺だけだ」

なんて殺し文句。元親さんは私を完全にわかっていらっしゃる。
ぼぼぼっ、と顔の熱がさらに上昇すると同時に、そういえば、と先刻の自分の行いの記憶が呼び戻される。
幸村君がほっぺにご飯粒つけていたから取ってあげた。それだけ。
まさか、それだけで…やきもちをやいてこんな行動に?
勿論これを責めることは決してない。ただ元親さんは、幸村君に触れた人差し指と中指に、何度もキスを浴びせる。
もう悪さをしないように、と指に暗示でもかけているみたい。
ちぅ、と元親さんが私の人差し指を軽く吸った。
それにぴくんと体を跳ねらす私を見て、ようやく元親さんがいたずらに笑った。

「わかったか?」
「…なら、元親さんも」

ぐいっと勢いよく元親さんの手を私の口元に引き寄せ、その男らしい指に自身の唇をあてがった。

「…ですよ?」

少し気恥ずかしくて上目遣い気味に彼を見上げると、白い歯を見せて笑う元親さん。
片手が私を引き寄せ、もう片方の手は私の頬に触れる。

「バーカ、青空を触るぶんしか俺の手はねぇよ」

元親さんの親指が、私の唇をそっと撫で、そして……。



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