拝啓。秋も一段と深まり朝夕の寒気が身にしみる季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
突然の便りをお許しください。高校に入学し、おおよそ一年が過ぎました。僕は新しい場所でも幸い良い友人ができ、優しい先輩方にも恵まれました。毎日のお弁当作りは早起きが大変だけれど楽しくやっています。あまり学校を欠席せず健康状態も良好です。
ペンを、置いた。
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僕の初恋の人、それが彼女だった。恋愛感情として人を好きになったのはその人が最初で最後。勿論、そういう行為もだけれど。彼女の趣味は天体観測と写真で、強いて言うなら、きれいなものが好き。そんな、本当に普通の女の子だった。
彼女は僕を天体観測に誘うのが好きだったのだろうか、ひとつきに必ず2度は星をみようと誘いをかけた。観測に出掛ける範囲は都内もしくは彼女の祖母宅周辺と決めていて、僕はいつもそれにただついて回るようなものだった。はい、もちろん。決まって僕は二つ返事で了承した。というのも、ひとつは星を見るのに基本お金をとられるわけもないから年中金欠の中学生のおサイフには優しかったということ。それに普段部活ばかりの僕だから、オフの日くらい彼女の好きなことのために使ってあげたいと背伸びをしていたから。
中学卒業手前、進学先が別々になった僕たちは最後の天体観測を計画した。当日は残念ながら大雨によって中止。それきり式の準備やらなんやらで忙しくなり、自然消滅。そして今に至る。悔いがないわけではないけど、悔いがあるわけじゃなくて。彼女が、みょうじさんが幸せならばこのままで構わない。ただできることなら、僕が幸せにしてあげたかったとも思うのだ。
そんなふうに、破局したカップルにありがちな心残りだとかは、少なくとも僕にはほとんど残留しなかった。もともとこんな性格の僕では彼女のようなすてきな人と釣り合わないと割り切っていたし、当時交際できていたことがまずラッキーだったのだ、と。それでも彼女の振り返る姿も、笑う声も、すべてを今でも愛している。
手を繋ごう普遍したキミと
瞼の裏には、未だにきらめく星があります。夜になるとあなたを想います。あなたは、なにを想って過ごしていますか。あなた以上に愛しい人は、今もまだいません。きみと結ばれることはきっと叶わないけれど、どうかあなたが、いつまでも幸せでありますように。敬具
桜井良