きらびやかな星屑 | ナノ

そろそろ寒い寒い冬が来る。夏は終わった、風がそう言っているようだった。
Tシャツ一枚では肌寒くなり、何か羽織るようになった。
もう、冬服の季節だ。

「おっ、みょうじちゃん」

「高尾」

私は写真部で高尾はバスケ部。特に接点もないような部活のはずだけれど秀徳のバスケ部はいわゆる強豪校ってやつで写真部は広報に乗せるために写真部と腕章をつけて選手の間近に行き写真を撮ることが少なくない。しかも私と高尾は同じクラスで、前の席では前後だったし。世間話をする程度にはしゃべる。
高尾和成という人間はルイス・キャロルが生み出した不思議の国のアリスにでてくるチシャ猫に似ていると私は思う。敵なのか味方なのかもわからないただ飄々としている。
けれど彼は人気者だ。なんというか、華を彼は持っている。だからキセキの世代だか歌われてる緑頭の彼の相棒としていられるのだろう。私はあまり緑頭の彼の写真は撮らない、というか枚数がすくない。
ほかの子がたくさん撮っているし、私はそれよりも高尾にレンズのピントを合わせてしまう。その理由がなんなのかは知らないふりをしているだけ。

わかってる、そんなこと。
けれど私は華がない、彼がもつ華を支えれるほど根はしっかりしていなければつぼみすらない。わかってる、そんなこと。知らんぷりでいさせて。

「みょうじちゃん今帰り?」
「うん、備品の整理してたら遅くなっちゃって」
「それにしても遅すぎるっしょ、もう8時すぎだよ」
「没頭してると忘れちゃうの」
「頑張りやなみょうじちゃんもいいとは思うけど襲われたらどーすんの」
「大丈夫だよ」

何を根拠に、と高尾が目を細めて笑う。
何が大丈夫なのかはわかんないけど。

「今何撮ってるの」
「何って?」
「写真!」
「あ、今は天文部と協力して天体写真」
「へえ」
「今度泊まり込み許可もらって冬の大三角撮ろうと思って。今はまだ下準備中なんだけどね」
「いいね、それ。星かあ」
「そう、星。」

高尾がそっと上を向く。私はそんな高尾をじっとみる。
ちょっと出っ張ったのどぼとけが私の好きな心地よい低音を生み出す。「今日きれいだよ」

何が、なんてわかってる。星が、だ。知ってるそんなこと。

「そうだね、星がきれいだ」
「まぁ星もきれいだけどね」

不意に視線がかちりと衝突して、はじかれる。

「まあ、なによ」
「んー、まだ内緒」
「…意味わかんない」
「すねんなって!アイスおごるから一緒に帰ろ!」


仕方ないな、ガリガリ君で手を打ってあげるなんてかわいくない口を叩いたのは私の口だ。
ばかだな、寒いのに。