きらびやかな星屑 | ナノ

バイトが終わって、お疲れ様ですと先輩たちに声を掛けて店の外に出ると、偶々通りかかった赤司くんがいた。彼も私に気付くとピタリと足を止めて。バイトかい、と悠々とした口調で話しかけてくる彼に一つ頷いて。赤司くんは買い出しだろうか。手にぶら下げられたコンビニの袋を見て頭の中でそんなことを考えた。

「…暇ならそこで話さないか」

そう言って赤司くんの指差した先には公園の中の街灯で照らされたベンチだった。家に帰っても暇だし、いいよ、と言ってそこへ移動する。話すって言ったって、今までそんなに話したことあるわけでもないし、共通点があるわけでもない。無理やりあげる共通点なら同じクラスで席が隣りっていうことくらいで。
案の定、話すことなんてなくて、二人でベンチに座って無言の時間が過ぎるだけ。暇だなぁなんて空を見上げれば、今までは気付かなかったくらいのたくさんの星が空に広がっていた。

「す、ごい」
「…ああ、星か。東京ではあまり見ることはなかったよ」
「東京は見えないよね」

赤司くんも興味があるのか空をずっと見上げていた。すっと彼が夜空に向かって指を向けたかと思うと、どれがどの星座かと教えてくれて。さすが学年首席というか、何でも知ってるんだなぁ。教えてもらったことを一つ一つ覚えながらずっと眺めていて。星の綺麗さに感動がやまない。

「君は星が好きなのかい」
「綺麗なものは好きだよ。赤司くんは?星好き?」

隣りに座る彼は少し考えて、ふっと微笑んだ。普段から笑うことの少ない赤司くんのその表情にドキリと胸打って、鼓動が煩くなる。赤司くんが微笑んだ理由って何だろう、と彼の言葉を待っていたらふいに手を握られて。

「綺麗なものを見る君を見るのは好きだよ」

喉がきゅうっと締め付けられる感覚に、喉が渇いて、心音がうるさくて。静まれ、静まれ私の心臓。そんなこと考えれば考えるほどうるさくなって、顔が熱くなって。

きみは最近ぼくに魔法をかけてくる
僕からも君へ魔法をかけられたかな