■空賊×少年

視界は何処までも白。辺り一面の銀世界には自分達が雪の上を歩く音しか聞こえない。指先にチリチリと痛む冷たい感触。下がった体温に自然と肩が揺れる。
寒い寒いと繰り返し叫んでいた口を噛み締めて今はひたすら耐えた。
自分の身支度は雪山を越えるものじゃないという自覚はある。魔法で体温を調節する事は出来るけど、寒いものは寒い。
自分の両肩を抱き締めると服の金具やアクセサリーが氷のように冷えてる。
すぐ隣を歩くオニオンナイトもマントをぐるりと体に巻き付け白い息を吐いて歩いていた。
山頂からふもとまで真っ白になった休火山を目印にしながら、山の向こう側にある大きな湖を目指す。幸いにも出くわすイミテーションの数は極端に少ない。カオスの戦士に至ってはこんなへんぴな土地に足を運ぶ物好きはいないらしい。
さっき洞窟の前で偶然出会ったモーグリから必要な回復薬やアイテムは補充することが出来た。暗い空を仰ぎ見ると粉雪がフワフワとゆっくり降ってくる。天候は安定している。山越えはもう一息だ。

視線をまた隣へと下ろすと振り返ったオニオンナイトと目が合った。赤くなった鼻を笑うと疎ましく睨まれる。怒ったオニオンの頬が紅潮していくのを見て思い付いた。

「うわっ、何するんだよ!」
「お前あったかいな〜」

オニオンの頬を両手で包むと冷えきった指先にじわじわと体温が移っていく。そのまま柔かい肌をぎゅっと握ると小さな悲鳴を漏らして暴れだした。

「ヴァン!」
「いいじゃん、ちょっとだけ」

嫌がるオニオンナイトを羽交い締めにして抱きすくめる。力で適わないのはわかっているらしく、強引に力で押さえ込むと呆れたように大きなため息を吐いて抵抗しなくなった。ぐりぐりと首元に顔を埋めて両腕を背中に回す。マントや鎧に積もった雪を払って長い後ろ髪に指先を絡めた。自分よりも熱い体温とオニオンの息が肩にかかる。目を瞑りながら他人の体温を感じる。膚の密着した部分から体が暖まっていくのがわかった。

「もう放してよ…」

羞恥にじわじわと耳まで真っ赤にしたオニオンナイトを見下ろして、名残惜しいけど解放してやった。けれど指先はそのまま彼の手首を捉えてゆっくり握り締める。
手を引きながら歩きだすとつられるようにオニオンも歩く。
俺は文句が飛んでこないのを良い事に絡めた指に力を込めた。



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20120102


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