■012:勇者と少年


「あなたとは戦いません」
僕はあなたには勝てないから。

少年は剣を向けても首を振るだけだった。
その手に剣が握られることはなく、彼から戦意は消えてしまった。
本当の事を話してしまえば、彼もまた同じく修羅の道を歩こうとするだろう。それでは駄目なんだ。カインとの約束は一人でも多くの戦士を次の戦いへ導くために眠りにつかせること。コスモスの本拠地を守るオニオンナイト、彼もまた未来への道筋だった。
しかし勘の良い彼に嘘も、脅しも通じることは無かった。
賢い子供はその全ての行動に疑問を持つ。

“何故?”

「…君には言えない」
「どうして?」

光の戦士が迷うことはなかった。しかし、彼はあまりにも不器用で、オニオンナイトは彼を慕っていたし信じていたが、少年が察するには言葉が足り無さ過ぎる。

「あなたがコスモスを裏切るはずが無いんです」

強引に意識を奪うのはあまりにも心が痛む。彼とて長く共に戦ってきた戦友。
真っ直ぐな瞳がこちらに向いた。

「…頼む。私と戦ってくれオニオンナイト」
「あなたは!何で…」
「君には眠ってもらう!」
「納得できない!僕は戦いません。説明して下さい!」

「君たちに…この戦いに勝ってほしいからだ」
絞りだされた言葉のたどたどしさとは裏腹に少年はその意味と決意を読み取る。彼にここまで言わせるなら信じる他ないのだ。
ああ、だけれど、

「…僕はあなたの手を汚したくない」
仲間に手を掛けることの辛さを目の前で露呈されて、なお苦しむあなたの顔はこれ以上見たくない。

「だから僕は僕自身に決着を付けます」



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20111128

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