■竜騎士×英雄

男ばかりの大所帯。高嶺の花の女性陣もこの世界では立派な戦士として喚ばれている。
すなわち護衛する理由もなく、どんな色男も手を出すことは阻まれた。そんなこんなで同じテントで寝るのはもちろん大の男同士。
同居人は若い戦士たちの中では年長者らしく落ち着きがある。戦闘でも圧倒的な力を持っていた為仲間からも一目置かれる存在だった。しかし、口数は少ない。

「セフィロス、」

呼び掛けると武器の手入れに動いていた彼の手が止まる。返事ではなく返ってきたのは視線だった。切れ長の瞳孔がランプの光で更に細くなる。
お互い背中を向けて座っていたが、声をかけずに立ち上がればすぐ肩がぶつかりそうだ。

「そろそろ明かりを消してもいいか」
「ああ、そうだな」

それだけの会話に緊張で手汗が滲んだ。自分らしくもない。長い沈黙と静寂、それからこの男の妙に小綺麗な顔が、疲れた身体と発散出来ない情に苛立ちを積もらせる。

「カイン」

ランプを消す為に立ち上がった所でセフィロスは俺を見上げた。

「…何だ」
「お前は」

言い掛けた口が閉じる。地面に敷かれた毛布が無造作に捲れている。俺は視線を反らさなかった。目を離せばその先の言葉が聞けなくなるような気がした。しかし彼は居心地が悪そうに視線を反らした。

「いや、何でもない。忘れろ」

「いつも言いたいことはズバズバ言うくせに、珍しいな」

考えるよりも先に口が動いていた。
皮肉地味た口調になるのは自分の悪い癖だったがこの場合は彼の所為でもある。
簡潔に言葉を選んで話すセフィロスが、言葉を濁した。何故?

「…そうか?」
「自覚はないのか」
「他人にどう思われていようが興味が無くてな」
「俺は、」

言い掛けて止めた。
俺は今何を言おうとした?

「どうして止めるんだ?続きを聞かせてくれ」
揚げ足を取ったつもりか、お返しだと言わんばかりに彼はニヤリと笑う。
しかし、思ったことを言ったとして、困るのは二人とも同じ。

「…お前がさっき言い掛けたものと同じだ」

ランプの明かりを落とすと同時に目を丸くした彼がまた言葉を飲む。



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20111114

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