ティーダは部屋に備え付けられていたディスプレイに手を伸ばし電源を入れた。
トップニュースは《コーネリアとアレクサンドリアが平和条約の名のもとに同盟を結ぶ》という見出しが映り、国を統治するコーネリア王とアレクサンドリアの女王ガーネットが会合している映像だった。キャスターが淡々と会談の様子を報じる間、画面をよく見るとコーネリア王の背後には我らが光の戦士、ウォーリア・オブ・ライトがいつもの鎧を身に纏い凛々しく二人を見守る姿が見える。

「リーダーも変わんないスねぇ」
ティーダは椅子にだらりと座ったままテーブルに頬杖を着いた。
「…相変わらずおとぎ話の住人だな」
隣でふっと笑うスコールにティーダは思わずぎょっとした。
壁に背を預け、自分の言葉に相槌を打つスコールの表情は『あの世界』で出会った時よりも幾分柔らかくなったように感じる。
そのことをわざわざ指摘すれば彼の機嫌を損ねてしまいそうなので、ティーダは追及しなかったが、心身共に彼の成長しているのは喜ばしく思う。

「あれがジタンの彼女っスか?」
しかしティーダが画面に映る黒髪の王女に指を差すと、スコールはあからさまに面倒臭そうな顔を歪める。ティーダは映像に見入っていた為気付かなかったが、スコールはこの時心の中で彼らをリノアには絶対会わせまいと誓っていた。
スコールがジタンとガーネットとの関係を説明しようと口を開き掛けたところで緊急速報が入ってきた。
≪ミッドガルの壱番魔晄炉で原因不明の爆発。テロリストによる犯行か?≫

「…クラウドっスかね」
「十中八九そうだろうな」

神羅カンパニーの本社があるミッドガルでは、アバランチと呼ばれる過激派の反神羅組織によるテロ活動が頻繁に行われていた。
神羅カンパニーは軍事国家パラメキア帝国と同盟を結び、地獄から呼び寄せたモンスターを盾に、強引な手段で世界各地の魔晄を搾取するだけではなく、最近ではクリスタルの力を引き出す研究にまで手を出していた。
そしてパラメキア帝国の皇帝は神羅の科学部門によって強化改造されたモンスターで世界を支配しようと企んでいる。
クラウドはそれにいち早く気付き、神羅の企みを阻止する為に動き出したのだ。

「セシルもさっさとコーネリア側に着いじゃえばいいのに…」

軍事国家バロンは先代まで神羅とパラメキアとの間に協力態勢にあったがセシルが王位を継承した後、同盟は破棄された。
しかし過去に赤い翼が、魔導士の村ミシディアから奪ったクリスタルは取り戻せず神羅に奪われたままである。

「個人の判断では難しいんだろう」
いくらバロンの指導者が変わり同盟を取り消したとしても、無抵抗のまま襲われ犠牲になったミシディアの人々がそう簡単に受け入れるはずではない。

「スコールんとこもそうなのか?」
「…」
「わかったよ!睨むなって!」

今現在世界中で戦争が耐えず起こり、バラムガーデンもまたSeeDを傭兵として戦地に赴くのは必然であった。雇われる兵士としてあくまで中立の立場を取っている。
今も扉の向こうで廊下を走る学生や教師の足音が聞こえていた。ティーダ自身バラムガーデンの慌ただしく混乱した様子は肌に感じている。
二人はバラムガーデンのスコールの自室にいた。



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