■英雄と淑女


「英雄などただの人殺しに過ぎない」

「わたくしはわたくしの意志のまま生きているだけですわ。何かと名前を付けたがるのは決まって他人ですもの。」

「お前と俺が正義になり得たのは単に大衆にとって都合がよかっただけのことだな」

「貴方が正義なんて言葉を口にするとは思いませんでしたわ」

魔導士の嘲笑が聖域に谺した。
剣と杖を握る二人は女神の台座を守護するように立ちはだかる。秩序の聖域を守るのはたった二人。最強のソルジャーと無敗の魔導士だった。

「強者が正義なら世界はわたくしの為にありますのよ」

カオスの戦士が率いる仲間、敵、そして自分をも模したイミテーションの大群が大地を揺らす。ここにあの若い戦士たちがいなくてよかったとセフィロスは思う。彼らは強いが、この戦いはあまりにも酷すぎる。

シャントットの放つ魔法が爆炎と共に人形たちを吹き飛ばした。聖域はそれを合図に戦場と化す。敵がその一線を越えたのを境にセフィロスも自身の愛刀を構えた。

策士は勝利する為ならば神すら囮に使う。
わざわざ敵にこちらの本拠地が手薄だと思わせ、攻めさせたのだ。他の戦士は全て混沌の神を討つ為に出払っている。
彼らはこちらに敵が向かっていることさえ知らない。それさえ策なのだ。

「これで戦いが終わると思うか?」
「さあ。あのへっぽこくんたち次第ね」

いずれかのコスモスの戦士があちらの神を落とすまでこちらは耐えねばならない。
切り捨てた人形がガラスのように砕け散り、踏みしめる地面を埋め尽くしていた。
セフィロスは見慣れた顔を切り捨てながら、間合いより距離をとる敵は素早く魔法で一掃する。敵の急所を的確に狙い、最低限の攻撃で仕留め、魔力は温存した。
一方シャントットはその魔力を惜しみなく使い、彼女は半ば暴走していた。
イミテーションを包み込む炎が辺りを照らしだし、灼熱が跡形もなく焼き尽くす。手加減する理由もない。
聖域の四方をぐるりと敵が囲んでいた。
もう逃げることは出来ないのだ。
二人の背後にたたずむ女神はただ祈るばかり。
一見この持久戦は無謀と思えた。
終わりのない数の力でねじ伏せてくる敵を相手に戦い続けるのは酷く精神を削る。運が悪ければ他の戦士共々全滅する可能性だってあった。
何より女神を守れなければ、この闘争に負けるとう責任感。
いや、最初から任せられているという認識はシャントットもセフィロスも無かった。ただ仲間たちの可能性だけを朧気に信じ、自分たちも負けることはないという根拠のない自信があった。だからこうして戦えるのだろう。


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20111101


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