■道化

カラカラ、カラカラと錆びた歯車がぎこちなく軋みながら回るような音がする。乾いた静寂を切り裂くように彼は笑う。
耳を塞ぎたくなるようなあの叫び声で。
破壊、破壊を繰り返し謡う道化師の心が壊れていく音が聞こえた。彼はお気に入りの人形で遊ぶことをやめない。
この狭い箱庭には楽しい遊び場だった。
奪っては壊し、踏み躙る。退屈な神々よって永遠に作り出される娯楽。
一人消してはまた出会い、二人消してはその顔に絶望を塗り付ける。どんなに彼が戦士たちを殺そうとも、誰も止める者はいなかった。

ある日見兼ねた女神は問い掛けた。何故殺戮を繰り返すのかと。彼は答える、何故?何故?理由を聞く事ほど愚かしい行為はない。貴女がいることが何よりの理由なのだ。
女神が存在する限り、戦士たちの悲劇は繰り返される。女神は彼と違い、苦しみ悲しむ心を持っていた。
慈しみから彼女は傷ついた人形を道化師から取り上げてしまった。それは彼の大好きな大好きな可愛らしい人形だった。
人形は心を持ち、意志を持ち、女神とともに戦うことを決意する。

道化師はもう人形に見向きもしなかった。
子供が遊び疲れて遊具を投げ捨てるかのように…抱えたガラクタを放棄した。
彼はまた新しい遊びを思いつく。
弱り切った女神を壊し、完全に世界を無に返す。そんな遊びを思いついて彼は人知れず無邪気に笑った。
彼が欲しかったものは何だったのか、
彼が本当に棄てたものは何だったのか、誰も知らない。彼自身その問いすら棄ててしまった。



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20111021

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テーマ「人外ファンタジー」
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