■英雄と盗賊(と旅人と獅子)
セフィロスはジリジリと距離を詰めるように歩み寄る。
あれは絶対に捕食者が獲物を狩る目だ。セフィロスの無言の圧力は重い。初対面でも彼に馴々しく振る舞えるのはバッツやラグナぐらいだろう。老若男女フレンドリーに接する俺でもそれは出来ない。
ジタンが息を呑むのと同時に見下ろす頭上で声がした。
「お前に頼みがある」
「ど、どうしたんだよ。改まって。俺に出来ることなら何だって聞くぜ?」
「気分を害したらすまない…」
「えっ、…うん。いや、言われないとわかんないぜ?言ってみろよ?」
神妙な顔に思わずどもる。
そろりと伸びたセフィロスの左手は俺を指差した。
「その尻尾を触らせてもらえないか」
っていうことがあったんだけど!
「…それで触らせてやったのか?」
「だってあのセフィロスが心底真面目腐った顔で頼むんだぜ!?断れるわけないだろ!」
俺を面白半分に囲むのはバッツとスコール。バッツは溢れる好奇心を包み隠さず俺の言葉にウンウンと相づちを打ち、対象的にスコールは興味無さそうな顔でいかにも付き合わされてますよアピールしてるが、聞く耳立てて突っ込む時は突っ込んでくるし彼もセフィロスの事は意識してるのか果たして地なのか。
「ジタンのしっぽをふかふかするセフィロスか…」
「ふかふかはしてねぇよ!!」
「気まずいことこの上ないな」
「というか男同士で何やってんだよ…」
「俺だって気持ち悪いよ!ていうか不可抗力!」
「(気持ち悪いは言い過ぎだろ…)」
「で、セフィロスはなんて?」
「何かたくさん質問された。生まれつきなのかとか、お前の世界では普通なのかとか、他にはどんな種族がいるのかとか」
「興味津々だな!」
「それからずっと二時間立ち話だぜ?もう勘弁してくれって…」
「仲良しじゃん!いいなー、俺もセフィロスと仲良くなりたい」
「(仲良し…なのか?)」
「じゃあバッツもしっぽ生やせば?」
「何のプレイだよ」
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20111019