■012:少年×騎士

血なまぐさい匂いがする。
有りったけの魔力で回復魔法を唱えるとセシルの体を柔らかい光が包んだ。
数えきれないほどのイミテーションがこちらに向かってくる。彼は僕の前に飛び出すと剣を振りかざし暗黒の力を解き放った。
闇が人形たちを襲いかかり、水晶のように砕け散っていく。イミテーションは僕たちと違い傷付いても血が出ることはない。まるで空っぽの意志のない人形ように戦うことを繰り返すだけ。
個々の力としては脅威じゃないけど、数の力で襲い掛かってくる奴らに対して消耗戦になることはわかっていた。
セシルはまた暗黒の力を使い、敵を破壊していく。イミテーションに攻撃する暇を与えないように、先手先手を取って。

「セシル」
ふらついた体を支えようと腕をのばすが、彼は攻撃を止めない。
「セシル!セシ…ッ」
黒い鎧の下で滲んだ赤い血が手のひらでぬるりと滑る。
彼は一度も敵の攻撃を受けてはいなかった。寧ろその逆で彼は最初から攻撃の手を休めなかった。敵を圧倒的に殲滅するには暗黒剣を使うしかない。しかし暗黒剣を使えば使うほど彼の体力は奪われていた。


「情けないととこ見せちゃったね」
イミテーションの群れから逃げ出した後、
セシルは困ったように笑った。
暗黒騎士が自分の生命力を削って力に変えることは知らないわけじゃない。彼を止めなかった僕にも責任がある。

「何であんな無茶したのさ」
「なんでだろうね」
「…僕がいたからでしょ」

「君は強いのにね、どうしてだろう。急に怖くなったんだ」

負傷したセシルと一緒に僕一人でもあのイミテーションたちを撒くことは出来た。二人でちゃんと戦っていたら勝てたかもしれない。
さっきの戦いは明らかに判断ミスだ
詰め寄れば戸惑うように、セシルは俯く

「君を守り切れないが怖い」
「僕は最初からセシルを守れてないのに?
そんなのズルいよ!」

俯いた顔を覗き込めても、この腕で彼を抱き締めることは出来ないんだ!



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20111012


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