■英雄×暴君

セフィロスは目蓋を伏せたままでいた。
包まれる熱は確かに人の温度。
顔に指先が触れるのを構わず、眠る真似を続ける。皇帝もそれを知っていた。
戯れに飽いた彼の気紛れだと、近寄っても文句の一つも言わないセフィロスに皇帝は手をのばす。

「お前は人間なのだな」

「それがどうした」

返事はなかった。
目蓋を開けたセフィロスは自ら黒革の手袋を外すと皇帝の手首を掴んだ。温かくもなく冷たくもない皮膚はただ感触だけが残る。
眠りもせず、汗もかくこともない。
元より人として死を迎えた英雄は今や本当のモンスターに成り果てていた。

「貴様が魔物か人間かなどと、考えたところで大差ない」

「貴様はただ跪き、私に忠誠を誓えばいい」

「お前にだけは飼われん」



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20110821



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