■英雄と騎士


昼と夜の境目のような空に青白い月が浮かぶ。風は穏やかでとても静かだった
少し離れたテントでは仲間が食事や休息、雑談など思い思いの時を過ごしている

「…月が綺麗だね」

セフィロスが振り返るとそこにはふわりと笑う青年が立っていた
いつもは黒い鎧を纏う、その姿は今は聖騎士で、月を見上げる横顔はどこか儚かった

「あなたはいつも寂しそうだ」
「…俺がか?」

今暫くこの男に持った印象を相手に言われ、セフィロスは内心苦笑を溢した

「そう、皆といる時もまるで独り取り残されたような目をしてる」
そんなつもりはない、と笑う
元々若者に囲まれて話す機会もなかった
ただどうしていいのか、わからないだけだ

「気を遣わせたか…」
「ふふっ、僕の思い過しならいいんだ」
セシルはふわりとと髪をなびかせて微笑む
コスモスの戦士の中にはセシルのように若くとも冷静で落ち着きのある者もいたが、騒がしいムードメーカーたちも同じく集まっているから話は別である。
年齢が離れているせいか、セフィロスは仲間内の会話には必要以上に入ろうとはせず、近くで見守っていた
その行動は無意識だったが、セフィロスにとってそれは苦になることではなかった
寧ろ、
「気楽なんだこの世界は。ひょっとすると元の世界にいるよりもな」

「そうなの?」

「戦闘を強いられるのは、どちらの世界も変わり無いが、ここに俺を縛る組織はないしな」
英雄だと祭り上げられることもない。と心の中で愚痴る

「…それでも元の世界に帰りたいのかい?」

「この世界では出来ないこともある」
それ以上セフィロスは語らなかった
セシルも口を閉ざした彼に無理いって尋ねることは出来なかった

この世界は夢のようだ。きっと元の世界に戻れたとして自分の世界に何の干渉もない。
ここで、どう生きようが自分の出生が分かるわけでもなく、事実が変わることもないのだ

セフィロスが知りたいことは、一つしかないというのに



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20110615



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