■英雄と少年


「ケアル」

やわらかな緑色の光が少年の身体を包む。
オニオンナイトは自分の肩の傷が癒えるのを感じた

「回復魔法なら自分で使えるよ…」
自分に魔法をかけた張本人を恨めしく見上げたが、途端素直にありがとうも言えない自分自身に苛立ちを覚えた

「お前は魔法主体で戦うだろう。魔力は温存しておけ」

セフィロスは何も言わない。
イミテーション数体を同時に相手していたのは彼も自分と同じはず。しかし掠り傷はおろかコートには汚れ一つない。本人はいつもの無表情で何を考えているのか読み取れなかった
格下の相手に油断した自分を呆れているのだろうか。それとも所詮子供だと割り切っているのかもしれない
いつも周りに子供だとからかわれているを見返したいと思っていたのに、その背中にはなかなか追い付けない。それがもどかしくて酷い自己嫌悪に陥る。
暫し沈黙が流れた。居心地の悪い空気を壊したのは意外にもセフィロスだった

「…テントに戻るか?」
「!」
「さっきの戦いはお前らしくない。調子が悪いのなら一旦退くぞ」

「っ戦えるよ!!子供扱いしないで!」
思わず叫んでいた。これ以上迷惑をかけるのも、惨めになるのも嫌だった

「俺はお前を子供扱いした覚えはない」
その言葉に反射的に彼の顔を見つめる

「お前は戦士だろう」
「…、うん」

「戦えるのなら、先を行くぞ」

セフィロスは話は終わりだと言わんばかりに背を向ける。
それでも自分の中のモヤモヤは消えない。
歩きだせず俯いているといよいよ呆れたように溜め息を吐いた

「お前は少々勘違いしているようだが…
お前は俺より弱い。だが子供だろうが大人だろうがお前が戦士であることには変わりないだろう」

「うん…」

「子供だと揶揄する事と戦士と認めない事は違う。それはあいつらも同じだ」

セフィロスの言葉にハッとした
彼は怒っているのかと思って顔を見ると、いつもの無表情に口端がだけが上がっていた

「それに、俺達と違ってお前はこれからもっと強くなるだろう。何も焦ることはない」

とうとう励まされてしまった。

「セフィロス、」

思わず彼に駆け寄り、コートを掴む。
彼は苦笑いを洩らすばかりで、首を傾げた

「…ありがとう」



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20110615



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