■英雄と義士


秩序の本拠地へと戻ると、テントの前で武器の手入れに没頭するバンダナ頭を見つける。
他は皆イミテーションの討伐からまだ帰っていないようだった
テントに近づくとこちらに気付いたフリオニールは顔を上げて軽い挨拶をしてきた

「早かったな」
「俺は聖域周辺を任せられていたからな。…変わったことはなかったか?」
「大丈夫だ」

夜が来るまでまだ時間はある。食事の準備はある程度人間が帰ってこないと出来ない
時間を持て余す瞬間は度々あった
この世界には戦闘に必要最低限のものと限られた人間とモーグリしかいない。
本の一つや二つあれば暇を誤魔化せるだろうが、戦闘の為だけに呼び出された戦士にそれは叶わぬ贅沢だった

視線を彷徨わせて辺りを見回す。フリオニールは相変わらず黙々と武器を研いている
武器の調整ついでに普段は荷物の中に入ってる道具も辺りに散らばっていた
男が持つには違和感のあるその深紅の花が視界に入り、ふと思い出す

「のばらか」
「なっ、セフィロスまで知っているのか!」

背後から覗き込むとフリオニールは顔を赤くして勢い良くバッと振り向いた

「…クラウドから聞いたが、何か問題でもあったか?」
「いや、別に問題はないんだけどな…」
明らかに何か言いたそうではあるが、単に気恥ずかしいのだろう。
のばらの咲く世界など夢というにはとても子供じみたものだった
しかし他人から聞いた話ではあったがとても印象深い。

「お前のそういう部分は俺の知り合いに似てるかもしれんな」
夢見がちで真直ぐで、熱血漢だったかもしれない、まだ上手く思い出せないが…

「知り合い?元の世界の仲間か?」

「仲間というか、部下だな…。お前と違って落ち着きはないが。根がしっかりしていて意志が強い」
子供のような絵空事を呟いていても、青年が心の奥に宿すものは、決して生温いものじゃないと感じる。普段の立ち振る舞いや、あの宿敵を目の前にした彼を見ているとそう思う。
それがどことなく、あのソルジャーに似ていて…

「俺はセフィロスが考えてる程しっかりした人間ではないと思うぞ」
フリオニールは嬉しそうにしながらも苦笑いを溢した

「…やはり似てないかもな」
あいつはもっとがさつだった



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20110613




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テーマ「人外ファンタジー」
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