■013:勇者


先の戦いで調和の神コスモスが敗れ、世界は崩壊に傾き大地は脆くなり、その大半は奪われてしまった。空は昼夜の色が混ざり、星屑が炎のように燃えて見える。
そして今、コスモスは消え世界は暗闇に包まれた。川は枯れ、火山からはマグマが吹き出し、風は止まってしまった。

光の戦士に元の世界の記憶はない。そして繰り返された過去の戦いの記憶もない彼でも、この空が異質で不安定なものだという事は十分わかっていた
幾つか前の戦いで見た澄んだ青い空を目や体が覚えている。この世界は美しかった

「貴方が望むなら、私は必ずこの戦いを終わらせてみせる」

コスモスはもういない。
戦士は女神を守りたかった。しかしもうそれは叶わない。
自分の手に輝くクリスタルこそ彼女が託した最後の希望であり、この世界の輪廻を断ち切るという確固たる意志。
カオスを倒し、仲間たちを元の世界へ帰すことが光の戦士の最後の使命だった
けれど胸の内にくすぶる記憶はこの世界を愛している。調和の神が何度戦いに破れようとも世界が秩序に守られるようにと願ったことは決して偽りではない。

「貴方が愛したこの世界を、私は守りたい」

世界を終わらせない為に戦うのだ。
戦士は光とともに仲間たちと集い、混沌の神の元へと歩きだした



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20110617



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