■騎士×夢想


戦闘で疲労した体を休めるため、ティーダは自分達のテントへと向かった。まだ日が真上にあるこの時間帯に他の仲間は誰も帰っていないだろうし、のびのびと広いスペースで横になることが出来るだろう。
そう踏んでいたがティーダがテントを覗くと見慣れた背中が一人ごろりと横になっていた。

「セシル?」

フワフワと無造作に跳ねる銀髪は微動だにしない。小声で名前を呼んでも反応はなく、そっと近寄り顔を覗き込むとスヤスヤと寝息をたてていた。彼には珍しく熟睡しているようで起きる気配はない。
そういえば昨晩の見張りはセシルだったな、とティーダは思い出した。
前日からの疲れも蓄まって、今日のイミテーションの討伐を早くに切り上げてきたのかもしれない。

ティーダはセシルのズレて捲れていたタオルケットを掛けなおすと自分もいそいそと隣に潜り込んだ。

「うわ、睫毛ながっ…」

大抵セシルは自分よりも寝るのが遅く、起きるのは早い。普段は寝顔なんてなかなか見る機会がない為、ついつい顔をじーっと見つめてしまう。
自分とは対称的に日に焼ける事のない白い肌に整った顔立ちは中性的なイメージが強い。
それでも身長や体付きは自分よりも大きく、軍人らしくがっしりとしていた。

ティーダは息をのんで手をのばした。
ぴたりと身体をくっつけると自分よりも体温が低くて気持ちが良い。
ゆっくりと彼の胸に頭を押しつける。抱き締めてほしい。けれど、起きてほしいような、ほしくないような。
静かに息を吸い込むと自分とは違う暖かい、他人の匂いがした。


「…淋しかったのかい?」

頭上で声が響くと同時に背中に腕が回される。首を上げれば、ちょうどあくびをした彼と目が合った。

「う…起こしちゃった?」
「んー。さすがにね」

まだ寝呆けているらしい彼はティーダをぎゅうっと抱き締めて頬をすり寄せてくる。
ティーダは内心あたふたしながらも、動けないため彼にされるがままになっていた。

「っ、セシル」
「ん?」

額に唇を落とされ、ティーダは自分の顔に熱が集まるのを感じた。

「何してんだよっ」
「何しよっか」

ふふふ、と笑う顔が反則だと思った。


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セシルは優しい。仲間相手に怒った所なんか一度も見たことがない。自分がどんなイタズラをしようと大抵笑って許してくれるし、お願いや頼みごとをすれば必ずといっていいほど快く応えてくれる。
だから、今、彼が自分を苛めて楽しんでるのは少なからず素で無意識にやってるのだと思う。

「…もうッ、しつこいッスよ!」
「待って、もう少しだけ」

ティーダは悲鳴を噛み締める。彼の下で跪いたセシルはもう何分も執拗に愛撫を続けていた。愛しそうに身体のラインをなぞり、指先と口でしつこいくらいの刺激を与える。
ティーダは触れられるだけで異様に昂ぶっていく自分の身体が恥ずかしかった。
自分一人乱されて、焦らされているかのようにいじらしい指先につい腰が浮く。

「セシル…」

ティーダの目にじわりと涙が滲み初め、やっとセシルは気が付いた。

「ティーダ?」
「もう、我慢出来な…」
早く、と急かす腕がのびる。核心に触れてほしくて内股が震えた。

「ごめんね、」
目元にキスを落としながらセシルは張り詰めたティーダのそれに指を絡め、はじめはゆるく、段々と緩急をつけて扱いた。

「ん、」
与えられた快感にまた目尻に涙が溜まる。
熱い息を吐くと同時に脱力した肩を抱いて、セシルは彼の額にキスを落とした。

「…はあ、」
「お疲れさま」

セシルは絶えずティーダの頭を撫でたり、顔に口付けてニコニコと笑っていた。
ティーダが短時間でイかされたの対して嫌味なまでに余裕の表情だ。

「セシルは。」
「僕はいいの。ティーダ可愛かったし、
また今度で」

今度。なかなか二人っきりになる時間もないというのに次があるのだろうか。
夜はフリオニールやクラウドも同じテントだし、元々時間もないのに。
納得していない様子で見上げてくるティーダにセシルは苦笑する。

「もう少し一緒に寝よう」

タオルケットに二人で潜り込んで、それだけもう満足だった。セシルにとっては二人で入れればもうそれだけで。



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20110802




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