■コスモス勢

その日コスモス陣営に悲鳴がこだました。
戦地から帰投したばかりのスコールは何事かと叫び声の元へ走る。まさかカオス軍がコスモスの本拠地へと直接攻め込んできたのか

「敵襲か!」

スコールは頭の中で最悪の情景が浮かんでいた。今の自分では疲弊し全力で戦えるほどの体力は残っていない。それでもスコールは仲間の為にガンブレードを構えた。

「ダメだ!スコール!来るな!」

冷静さを欠いたジタンの声が聞こえ、一気に緊張感が走る。スコールはただならぬ空気を感じ、制止も無視して声の方へと駆け付けた。
そこは素材や回復薬などのアイテムを貯蓄し、普段は倉庫として使用しているコテージだった。
コスモスの戦士なら誰でも使用でき、怪我人を手当てする場所でもあった。特に回復魔法の使えない者は頻繁に利用する。
そんな場所から悲鳴が上がることにスコールは不審に思う。夜営のテントが並ぶ更に奥の開けた場所にコテージはあった。
そこには立ち尽くすセシルとバッツがいるだけで、辺りを見回してもカオスの戦士やイミテーションの気配はない。

「来ちまったか…」

「ジタン!一体どうした!?」

声の方を見やるとスコールは地面に倒れているジタンに気付き駆け寄った。よく見ると自力で立ち上がれないほど深手の傷を負っている。

「スコール!気を抜くな!」

ガキン!と剣と剣が激しくぶつかり合う鈍い音がスコールのすぐ後ろで聞こえた。
振り返るとバッツがその手にガンブレードを取り出し構え、スコールを襲った刃を受けとめている。
見上げてハッとした。その相手はスコールもよく知る、暗黒騎士姿のセシルだった。

「バッツ!…セシル!?何故、」

セシルが仲間に剣を向けるような男ではないことはスコールもよく知っている。それがどうしてこんな状況になっているのか。
無言で剣を斬り付けてきた彼は明らかに普通の状態には見えない。だがセシルは敵に洗脳されるような男でもなかった。思考をめぐらせている内にある一つの可能性に気付く。

「…まさかコンフュか?」
「いや、バーサクだ」

セシルの猛攻は一振り一振りが重く、バッツは剣でその身を防ぐのに精一杯だった。しかしいつものような研ぎ澄まされた太刀筋よりも、ただがむしゃらに剣を振るっているような様子だ。
スコールは魔法のコンフュによるステータス異常の混乱だと判断したが、バッツは首を振る。
バーサクは対象となった者の攻撃力を上げ、狂戦士化する魔法である。普段からセシルと手合わせで剣を交える機会があったバッツは彼の腕力や素早さを記憶していた。その動きと今の彼の動きは明らかに違う。
しかしバーサクであるなら味方を攻撃するはずがない。

「セシル!やめろっ!」

バッツの呼び掛けにも反応はない。
スコールもすぐさま立ち上がり、応戦する
二人がかりで剣を跳ね返すとセシルは後退った。

「まさかジタンは…」
「ああセシルが」
「クソッ…バッツ!エスナはどうした!?デスペルは!」
「とっくにMPが尽きてる!」

スコールは舌打ちした。自分も回復魔法を持っていない。あいにくこの世界ではフェニックスの尾が貴重な為、持ち合わせていない。バッツもたぶん同じでジタンを治癒することが出来なかったのはそのためだろう。

「どうしてこうなったんだ!?」
「わからない、俺たちが来た時にはもう…」

「うわぁーッ!」

二人がセシルと睨み合う中、また別の悲鳴が聞こえた。
コテージから飛び出したかと思えば、弧を描いてその人影は吹っ飛んだ。向かいにある大きな樹の根元にぶつかり仕舞には地面へと叩きつけられ、その人物はぐうの音も言えずのびた。

「「ティーダ!!」」

二人の叫び声がその場に虚しく響く。
そしてスコールとバッツの視線がティーダからコテージへ向かう。彼らが息を呑んだと同時に入り口からのそりとバスターソードを引きずったクラウドが顔を見せた。

「まさか、」
「…ああそのまさかだな」

いつもは色白い肌が真っ赤に染まり、血走った目がこちらを向けられたのを確認すると二人は確信した。
スコールとバッツがその場を飛び退くと同時に振り下ろされた大剣が地面に突き刺さった。



>>NEXT


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -