コスモスの戦士を狩りに出た後、あの兵士が自分を追い掛け、更には引き止めたのだとセフィロスはのたまった。あろうことか敵であるコスモスの戦士を庇い、自分に剣を向けたのだと

「裏切り者は切らなければ」
そう嘲笑うセフィロスは、こうなることを全部わかっていたのだ。あの兵士とティファという女が元の世界で仲間であることも!あの女の事になれば兵士は何があっても助けると予想していたのだろう、全ては己と戦わせる為に!

「茶番だ」
コスモスの戦士が互いを潰し合う今、12回目戦いもカオスの勝利は最早確定したようなものだった。
イミテーションの群れに手も足も出ない敵に我らが直接手を下す意味も無い。
興が削がれてしまった。

「…戦士が一人いなくなろうと変わりない。好きにすればよかろう」
「そうさせてもらう」

回りくどい事をせず、さっさとあの人形を壊せばいいのだ
同じカオスの戦士とはいえ元々因縁があるのだろう。兵士は戦いを拒んでいたし、こちらも駒として使えないと判断していた。
ならばこの男の身に委ねても構わんだろう
どうせ消滅させる気もないのだ

「それほどまでに過去が愛しいか?」

繰り返してきた戦いの輪廻で自分の記憶は殆んど復元されている。セフィロスがこの世界に来たのは自分が呼ばれた時間よりも後で、ほんの最近ではあったが、十分に記憶を取り戻せているはず。
より鮮明に、戦えば戦うほど過去の記憶は身体に馴染み、思い起こされる。
それを望んで男は執拗に戦っているのか。

「英雄と讃えられた時間に酔い痴れるのであろう?」

セフィロスは何も言わなかった。ただいつもの感情のこもらない冷たい表情で皇帝を見据えている。
哀れみも無意味か。
これ以上この男と関わっても暇潰しにもならん。皇帝はいよいよ時間が惜しくなって、自ら姿を消した

あの兵士に執着さえしなければ扱いやすいと思っていたが、相当問題が大きかったようだ。自分に忠誠を誓い仕えれば扱き使ってやるというのに。
悪態を吐く息に滲ませ、気を取り直す。
セフィロス一人に構ってやるほど自分は暇ではないのだ。
いつかは己が神をも越えてこの世界をも支配する存在になる。その為の策を計画どうり運ばなければならない。

皇帝はその足で混沌の神カオスに謁見するため、混沌の果てと呼ばれるその場所へ足を踏み入れた。すると、今し方問題の元凶となる兵士が地に伏せ倒れているではないか。
血に塗れた兵士の姿を確認すると皇帝は一瞬で状況を悟った

「本性を見せたな…遂に主に噛み付いたか」
「哀れな者よ、勝てぬとわかって歯向かうとは」
カオスは玉座に座り、肘掛に凭れ全てを見下ろしている。兵士の肉体の損傷は激しく、消滅は免れない。戦いが熾烈であったのは見て取れた。この戦士も決して弱いわけではなかったが、混沌の神が容赦するはずもないのだ。

カオスを倒せばコスモスの勝利は決まる。
それほどあの女が守りたかったのか、自分には到底理解出来ない感情であった

兵士はついに力尽き、肉体は淡い光となって消えていく。この戦士が消えたとして自分の計画にもカオスの勝利にも支障はない。
寧ろ反乱分子が難なく処理出来たと考えれば特だろう。皇帝は一人ほくそ笑む。
セフィロスの反応が酷く楽しみだ。



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