■英雄×暴君


手をのばすと指の間をさらさらと銀色の髪が絡み付く事無く流れていく。想像したように手触りは良い。
長い前髪を指先で捕まえる。覗き込んだ顔は生まれつきなのであろう、色素は薄い。伏せられた目蓋が上がるとサファイアのような青色ともエメラルドのような緑でもない不思議な色をした瞳が覗く。切れ長い瞳孔はまるで猫のような獣を連想させた

「美しいな、お前は」

銀色の髪の似合う整った顔に、戦士として鍛えられた完璧な肉体。容姿も戦闘能力も申し分ない。一国の王の騎士とするには相応しい男だ
自分の足元に跪くセフィロスは見やり、皇帝はうっとりとその顔の輪郭を撫で上げた。
セフィロスは僅かに怪訝な表情で眉を動かしたが、その行為自体を咎めることなく冷やかな目で皇帝を見つめていた。

「…お前の趣味は理解しがたいな」
「理解など必要ない。ただの戯れだ」

薄い唇に紅が触れる。皇帝は彼をシーツの上へと導いた。自らが足をのばし、その足を舐めろと言わんばかりに踏ん反り返る。
セフィロスは苦笑をこぼした。この者はどうやら自分をも支配したいらしい。
この男に付き合う自分も自分だが、いわば単純な気まぐれによるもの。セフィロス自身を動かすのは純粋な好奇心だった

「愛撫の仕方もわからぬか?」

喉奥で笑いを噛み締める。拙いままごとに付き合うのも面白い。
セフィロスは放り出された足を捉えると、前に屈み、甲斐甲斐しくヒールを脱がせ、露になった足の甲に舌を這わせた。

「フン、良い眺めだ」

気をよくした皇帝は行為の先を促す。
足の指の間を舌でなぞり、再び足の甲へ戻り、上へ上へと移動していく。
皇帝は飽きもせず銀色の髪を指先で触り続けていた。

「私のものにならんか。セフィロス」
「…出来ぬ相談だな」

黒革の手袋は動きを止めない。愛情の欠けらも感じ得ない二人の行為は随分と義務的で、皇帝が一方的な欲を満たすための遊びだった。

「つまらんな」

分かり切っていた事であった。皇帝もさして不満を見せることはなく、言葉にしただけのようだった。本心から思っていたなら力付くで動いている。

自分の下で金色の髪がシーツに散らばる様を見てもセフィロスは何の感慨もなかった。
ただこの男がどうしてこれほどまでに、支配欲に飢えているのか興味がわいたのだ。



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20110702



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