■012:英雄←暴君
※死ネタ


カオスの本拠地への通り道といえどパンデモニウムに足を踏み入れた事にセフィロスは後悔した。カツカツとヒールを鳴らし近づいてきたその男の存在に初めから気付いてはいたが、セフィロスは構わず足を進める。
こちらに干渉されるだけで面倒な事になるのは、前の戦いからでも分かり切った事だ

「アレと戦えぬ事が余程不満か?セフィロスよ」
投げかけられた言葉にセフィロスは返事を返しはしなかったものの、眉間の皺を深くする。その表情を見た皇帝は心底愉快で堪らない。
中々戦いに加わることもなく己の記憶の回復の為だけに動き、同じ世界から来たあの者にのみ執着を見せるセフィロスを皇帝は自分の思うがままに動かそうと躍起になっていた

セフィロスに力があるのは勿論のこと、他のカオスの戦士と馴れ合う事もなく自分の目的の為だけに冷静に動き、不要なものは直ぐ様切り捨てる判断力がある。破壊者ばかりが肩を並べるカオスの戦士の中で皇帝はセフィロスに目を付けていたのだった


「そういえば…また新しいコスモスの戦士が召喚されたそうだ」

「…私には関係のないことだ」
無用な時間だと言わんばかりにセフィロスは歩みを止めない。皇帝は引き下がるわけもなく、しかし追い掛ける事はしない。あくまでも自分のペースで、主導権を握る。

「まあ、待て。お前と同じ世界から来た者かもしれんぞ?」
そこでセフィロスはようやく足を止めた。
皇帝は自然と口端が上がるのを止められない

「黒髪で長髪の素手で戦う女だ」

皇帝に確信はなかった。だが、ただ身なりを見るかぎり、自分がいたような鎧を纏い戦う世界の住人ではない。魔法の使い方も珍しいものだった。あの男が使うものに酷似している。それだけである。

「セフィロス、お前は記憶を取り戻す事が目的だったな」
同じ世界の者と戦えばより鮮明に記憶を取り戻す事が出来る。それは皇帝が身を持って知っている事実であった。そして度重なる戦いの輪廻の記憶を持つカオスの者には周知の事実。

実際皇帝にとっては、あの者がセフィロスと同じ世界の者でなくてよかった。ただこの男は興味を持てば自分から行動に移る。


「…余程私をコスモスの者と戦わせたいようだ」
直接的ではないが、ようはカオスが勝つ為に、コスモスの戦士を消せと言われているようなものだ。

「フン、お前は些か勝手に動きすぎるくらいがある。少しは働いてもらわねばな」

「…いいだろう」

目的の為に、きっかけを与えたようなもの
しかし互いの目的を遂げる足掛かりとなるのであれば、拒否することもあるまい。それに「良いものが見えるかもしれん」
そう呟いたセフィロスは再び歩きだし、皇帝の前から姿を消した。



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