■少年×勇者

抱き締めてほしいと言えば優しい包容が返ってくる。キスしてほしいと言えば、額に触れるだけの口付けが。
どこまでも子供のような扱いに少年は彼の腕を引っ張って無理矢理彼の唇を奪った。

「、…君は」

「僕はあなたを愛してるんです!」


光の戦士にとってオニオンナイトは決して子供ではなかった。同じコスモスの戦士であり、仲間であり、彼の知識には目を見張るものがある。信頼し合える友だったが、少年の方はそうは思っていなかった。尊敬の眼差しが違うものにすり替わったは果たしていつだったのか。今の今までそれは見て見ぬふりを続けられ、苛立ちに少年は叫ぶように告白した。そして後悔する。

困らせる気はなかった。しかし、結果は自分にも予想出来たはず。彼の表情が段々と曇っていくのを少年は傍観者のように見つめた。
口を滑らせたのは彼が自分に少なからず好意を見せたからで何も確信がなかったわけではない。けれど愛だの恋だのそんなものわかったつもりはなかったし、自分はもちろん余裕があるわけでもない。純粋な我儘だった。

「…私にはよくわからない。この感情が、君のものと果たして同じなのか。それとも他の仲間を思うような普遍的なものなのか」

ウォーリア・オブ・ライトはぽつりと独り言のように呟いた。勇者が愛を語ることのぎこちなさに少年は焦れったく思ってしまう。
もっと単純な思考で感情は成り立っている。頭で考えるよりも身体を先に動かすもの。

「僕があなたを抱き締めたいと言ったら許してくれますか」

「ああ、拒む理由はない」

「あなたは僕を抱き締めたいと思いますか」

「…ああ」

ラインを越える為にはリスクがいる。
少年は、はじめのハードルを蹴り飛ばした。あとは目の前の彼次第である。
じわじわとこめかみに伝う感情を飲み込んで、少年は根気強くその言葉が紡がれるのを待った。



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20110829



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テーマ「人外ファンタジー」
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