■24710(義士×兵士)

背筋に嫌な汗が流れる。緊張と妙なぎこちなさで心臓がバクバクと鳴っていた。
隣をちらりと伺えばいつもの無表情のクラウドがいる。視線をちょっと下ろせば自分の手と彼の手が強く握られていた。
フリオニールは混乱する。
この状況を作り出したのはクラウドだ。

ダンジョンの探索とイミテーションの討伐が終わり、今日はもうテントに戻ろうと切り出し、来た道を引き返そうとした時だった。
ごくごく自然な動作で彼は自分の手を握り締めた。
あまりに突然だったものだからフリオニールは絶句して、しかしクラウドはまるで当たり前のような素知らぬ顔をしていた。
仲の良いティーダや、気さくなコスモスの仲間からはボディタッチをされることはあったが、クラウドからこんなことをされるのは初めてだった。
自分よりも年上だし、どちらかと言うとクールなイメージの強い彼だから酷く違和感を感じる。
繋がれた手は自分よりも少し体温が低かった。それとも自分の体温がいつもより上がっているせいなのかもしれない。

身長は低いとはいえクラウド自身の体格は完全に戦士のそれであった。あの大剣を扱うため腕や肩の筋肉も十分にある。それでも芯が細いせいかどこか自分より華奢な印象が残っていた。多種の武器を扱い、ごつごつとあちこちたこだらけの自分指とは違ってクラウドの指先は細長く、色白い。

憧れに近い思いを彼に向けていた。
彼のように強くありたいと思いながらも、
彼を守りたいとも思う。
友情というには押し付けるような気持ちで、フリオニールにはその感情が何なのかよく理解できなかった。

…いい加減無言が辛い。喉が乾く。
噛み締めていた口の中はカラカラだ。

「あっ、あの、クラウド」

「フリオニールー!クラウド!」

「セシルとティーダたちだ」

「えっ、ああ…」

「どうかしたのか?」

「い、いや、何でもない」

タイミングは悪かったが、セシルとティーダのタイミングはちょうどいい。これ以上クラウドと二人でいると変な気分になりそうだ。赤くなる顔を誤魔化すために俯いて、ハッとする。
二人が合流しては益々繋いだ手を放すタイミングを逃す、そもそもクラウドの意図がわからない。もしかしてもしかすると、自分は子供扱いされているのだろうか。


「何だ二人も手を繋いでるのか」

「えっ、」

セシルの言葉にフリオニールが顔を上げるとニコニコと微笑みながらセシルとティーダが繋いだ手を掲げる。

「じゃーん、俺とセシルも〜」

一瞬にしてポカンと口を開けてフリオニールは固まる。自分にはわからないが、ひょっとすると手を繋ぐくらい大した事じゃなくて、とても日常的なスキンシップなのかもしれない。自分自身の経験や記憶にはないが、世間一般ではきっとそうなのだ。

「どうしたんスか、フリオニール顔赤いッスよ!」

「もしかして今更照れてるのか?」

「…ッ!クラウド、からかったのか?」

「すまない。フリオニールがあんまり可愛いからついな」

怒るつもりで振り返るが、隣には笑顔のクラウドがいて、フリオニールは何も言えなくなった。彼の貴重な笑顔が見られたからもう何でも許してしまおう。



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20110815




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