■義士×兵士
食事の支度をしていた。包丁を握る経験など元の世界でも殆んどなかったが、自分よりも年下の仲間たちばかりに世話になるのも申し訳ない。せめて手伝いくらいと、台所を覗くとそこにいたフリオニールは快く迎えてくれた。
洗った野菜を切り分ける時だった。ぎこちないまま包丁を下ろした先に自分の指先があると気付かずそのまま一緒にざっくり。
「…っ」
「クラウド!」
切れた指先から血が線を引くようにぷつりと溢れだす。見た目ほど痛みはない。
しかし背後で見守っていたフリオニールは血相変えて俺の手を引いた。
「…これくらいどうってことないさ、」
ケアルをかけるまでもないし、あとで絆創膏でも貼ればいい。唾でもつけていれば治る
そう言おうとして腕を引いたはずが、指先はフリオニールに絡み取られ血が滲んでいた人差し指は彼の口内へと収められていた。
熱い舌がぬるつく唾液と一緒に指先にまとわりつく。
言葉を発しようとした口はパクパクと開閉するだけ音に鳴らない。
捕まれた手首が熱い。
「…フリオニール」
「あ!いや!すまない…」
名前を呼ばれ我に返ったのか、彼は慌ててくわえていた指を離した。
きっと無意識での行動だったのだろう、咎める自分も気恥ずかしく顔が熱くなるのを感じた。目が合えば気まずそうに逸らされる。
フリオニールの顔はすっかり真っ赤だ。
「いや…ありがとう」
お礼を言うのも可笑しな気がしたが、なんとか場を収めるために口に出す。
この状況で沈黙は耐えられない。
胸がドキドキする。こんな至近距離で彼の顔を顔を見ることもないし、触れられる事もなかったから意識してしまって変な気分になる。
「すまないな、手伝いに来たのに」
「!そんな、気にすることないさ。誰だって不注意はあるし…」
「違う」
え?と間の抜けた顔をしたフリオニールの腕を引っ張り、引き寄せた頬に口付ける。
すると、驚きどもりながら頬に手を添えて面白いほど顔を真っ赤にする。
初々しい反応が可愛くてついつい手を伸ばした。
「く、クラウド!?」
「フリオニールにちょっかい出したくなった」
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20110713