■騎士×兵士

見た目はあんなに固そうな髪型なのに、実際手をのばしてみるとチョコボの羽のようにふわふわしている。そんなことを本人に言えば嫌そうな顔をするのは目に見えているから、思うだけニヤニヤと口を緩めることにした。
朝日は当に昇っている。けれどここに咎める人も、心配して起こしに来てくれる人もいない。重い瞼に抵抗しなくてもいい。朝食までもう一眠りすることが出来る。
クラウドと二人の野営はとても気楽だった。

信頼されていることを良いことに、コスモスの本拠地から遠出して二人でこの世界を探索することにした。
提案するとクラウドは少し意外そうな顔をして、ティーダやフリオニールは元気良く送り出してくれたけど、やっぱり心配してた。
少しだけ寂しそうに笑って。

「…起きたのか」

気配を感じたのか、クラウドが眠そうな顔をこちらに向けてくる。擦れた低い声がやたら耳に残った。返事の代わりに毛布の中で手を取り、指先を絡めると息を吐くような小さな笑い声がした。
クラウドと一緒にいて心地好いのは言葉が無くても相手に気持ちが伝わるからだろう。
彼自身口数も少ないけれど長い時間隣にいて大体のことはわかるようになった。

「どうしてあんなこと言いだしたんだ?」

指先が手首に触れる。自分とは違う体温に眠気は覚めてしまった。クラウドはまるで独り言のように天井を見ながらぼそりと呟く。
テントの隙間から覗いた光が彼の髪に反射してキラキラと輝いている。

脈絡のない問い掛けだったけれど、すぐにピンときた。
我儘を言うのは、僕ではなくティーダの特権だ。フリオニールが彼を宥め、僕が甘やかし、クラウドは見守る。
そんな風に四人でいられるのが大好きだった。きっとみんなも。
不器用ながらもお互いに執着していた。
あまりに大切な存在になってしまったから、手放すことも先に進むことも出来なくなってしまった。

「クラウドを独り占めしたくなったんだ」

彼のように昂ぶった感情を表に出せない。
感情を殺す事ばかり身につけてしまったから、どうしたらいいのかわからない。
少しだけ二人になりたかった。
そうか、と短く頷いてクラウドはまた目を瞑った。握られた指先がだんだんと熱くなる。きっと本当に伝えたいものはこんなことじゃ、届かない。
どうしても不毛な恋をした。



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20110922



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