■騎士と英雄
「あなたと僕の何が違ったんだろう」
「同じとでも思っているのか?」
「…あなたにも一人くらい大切な友や仲間がいたはずだ」
「そんなもの、」
最後まで言葉が紡がれることはなかったが、セシルはその一言で悟ってしまった。
セフィロスはいつも無表情だった。彼は噴怒することもなく、嘆くこともない。しかしかつては心の奥底で憎しみや悲しみを抱えていたのだ。人間として。
「人は何度でも、やり直すことは出来る」
「そうやって自分を誤魔化してきたのか」
「…あなたは、どうして」
どうして。その言葉に返事はない
もう届かない
希望があれば人は何度でもやり直せる。
心許せる友がいれば、仲間がいれば。愛する人がいれば帰る場所もあるだろう。
でもそれが無かったら、無くなってしまったら?
セシルは自分自身の世界と彼の世界は違うのだと唐突に理解した。次元や生きた場所の違いではない。彼が守りたかった世界はとっくに壊れてしまっているのだ。
「話は終わりだ」
セフィロスは刀を構え、口を閉ざした。
あとはもう戦うことしか出来ない。セシルは騎士として剣を握った。
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20110902