■013:少年と少女
まるで獣ような姿になった彼女に、オニオンナイトは剣を向けるしか出来なかった。
暴走したティナの魔力は自分と桁外れであったし、少年もこれまで幾度となく戦いを乗り越えてきた経験から全力で戦わなければ自分の身が危険だということを瞬時に判断していた。
しかし、やはり彼女を傷つけることに強い抵抗があった。戦うことを恐れ、いつもの心優しいティナを思えば今の状態は彼女が望むものではないはず。到底想像もつかないような荒々しさと殺意が滲み、力が制御出来ていない様子は明らかに正気ではないものだった。
まるで誰かに操られているかのように、無理矢理力を引き出されている。
「やめるんだティナ!」
自分一人の叫び声が虚しくその場にこだまする。解放された力で手加減することなく攻撃を仕掛けてきた。剣や魔法でしのぐにも限界がある。
あっという間に距離を詰められ少年は息をのむ。なによりも自分を見ていない彼女の虚ろな瞳が、怖かった。
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20110815