■勇者×猛者
大剣が地面に突き刺さる。勇者が膝を付いた自分に手を差し伸べた。決着がついた。
幾度も輪廻を重ねる内、この青年と戦ったのは果たして何度目だっただろうか。
闘うたびに勇者の心は育ち、確実に剣は重くなっていった。相反して自分は長きにわたる闘争の輪廻に疲れていた。負けるのは当然の定め。ようやく全てが終わり、解放される。
「…止めをさせ」
その手にすがり生き恥を晒す事は考えられなかった。戦いの猛者となろうとも、せめて、かつて戦士であったように戦場で死ぬことを選ぶ。
最後の力で差し出された手を払い退ける。
しかし剣を鞘に収めた勇者は自分の前で跪いた。
「私は世界を愛しているように、お前をも愛しているのだ、ガーランド」
戯言を、
もはや悪態を吐く気力もない。鎧の下に滲む血がぬるりと滑った。
世界を、自分をも救うと宣った彼は、自分の肩を抱き締める。
朧気になる意識の中で、私は勇者の腕に抱かれていた。
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20110806