■少年×獅子

「スコールって僕のこと嫌いなの?」

純真な視線。オニオンナイトの呟きにスコールは張りついた無表情を崩して眉をひそめる。少年は純粋だったけれど無垢というには経験も知識も豊富で、ついでに好奇心は年齢相応のそれだった。

「…どうしてそうなる」

スコールは重い口を開き、そう質問を質問で返した。すなわち、それはオニオンナイトの言葉を肯定したと取れる。

「何でってそう感じたからさ。知ってる?スコール、戦ってる時しか僕に話し掛けてないの。」
「…」
無言も肯定。オニオンナイトは困ったように苦笑する。決して避けられてるわけではないのだ。スコールはもともと無口な方だし、お互い必要不可欠な会話はする。あからさまに嫌悪感を押し出されるような事もない。
スコールはああ見えて感情が露骨に表に出るから周囲はすぐに気付くのだ。

「違う、…お前を見てると思い出すんだ。いろいろと」

観念したのかスコールは息を吐いて少年を見つめる。どんなに鍛練しようと幼さの残る体つきに、顔、表情、
オニオンナイトは訝しげに見上げた。

「…俺がお前ぐらいの時、俺は全く戦えなかった。だから今のお前が羨ましかったのかもしれない。…それだけだ」
―おねえちゃん
スコールの記憶の断片にある思い出は、自分が慕っていた人を繋ぎ止められなかったのは自分の弱さのせいだと酷く思い詰めていた。
自分が弱いから、力がないから、“おねえちゃん”はいなくなってしまった。自分はいらない子だから。
もう過ぎ去ってしまった事実はどうしようもないのだろう、けれど。スコールもそれは理解している。だから余計にオニオンナイトを羨望するのだと思う。自分とは違う未来と自分とは違う在り方に。皮肉や嫉妬などと形ある感情ではない、知らず知らずの内に彼を自分と重ねてしまっていた事をスコールは恥じた。

「お前のことを嫌ってはいないさ…ただお前自身を見ていない自分に腹が立っていた。
勘違いしたなら悪かった」

「…うーん。よくわかんないけど、じゃあ僕のこと好き?って聞いたらスコールはなんて答えるの」

謝罪を口にした唇は今度は慌てたようにパクパクと音もなく開閉する。悪戯混じりに問い掛けるオニオンナイトに悪意はなく単純にスコールから言葉を引き出そうとしていた。そう。だから余計にタチが悪い。彼の性格上ストレートに感情を口にするのは困難だ。オニオンナイトもそれは承知だったが、この場で聞いておかなければ、また明日から悶々とした生活を送るはめになるかもしれない。疑り深いのは少年らしからぬ癖。

「…ッ、嫌いじゃない」
「それはさっき聞いたよ。スコール?」
「それだけだ!」
イエス、ノーで答えてほしいのに。
これ以上の追及は今の彼には難しいかなと、オニオンナイトは策士の顔で笑う。顔を赤らめたスコールが十分な答えだった。

疎ましそうに睨んでくるスコールを、何事もなかったように受け流して、少年は余裕に溢れていたように振る舞っていたが内心ホッと息を吐いた。
誰だって仲間に嫌われたくはないし、況してやスコールは剣士として一目置く存在、もっと彼のことが知りたいし、聞きたい。



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20120316

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