長編 | ナノ


2.紅氷柱




「ウワアアァァ!!」


ザクッ…

幸村様の後ろを狙った奴を、斬り捨てた。
敵兵は糸が切れたように地に堕ちる。


「なまえってば相変わらず容赦ないね〜。」

「長には言われたくない。」

「なまえ!かたじけない!助かった!!」


戦場で、長とともに幸村様を援護する。
戦況は武田軍の圧倒的優勢。もうそろそろ敵軍が撤退してもおかしくないという状況だ。


だんだん襲い掛かってくる敵兵も少なくなってきたかという頃、立派な前立て付きの兜と、上等な鎧に身をまとった敵の武将が私たちの前に立ちはだかった。


「貴様は紅蓮の鬼か。それに、猿飛佐助と……紅氷柱だな。」

「ぷっ……」

「おい長、なに笑ってんの。」

「佐助ぇぇ!この状況で吹き出すなど、戦場に相応しくないであろう!!」

「ちょっ!だって旦那……“べにつらら”って、何度聞いても笑っちゃうっしょ!……ホントに……ぶふっ」

「うるさい!!別に私が自分から名乗ったわけじゃないしー。気付いたらそんな風に呼ばれてただけだし!闇の分身使って顔に変な緑のやつ塗ってる方が中二クサいだろーが、やーいやーい!」

「はぁ〜!?俺様もう怒った!なまえのおやつなんて……『やめぬかぁぁぁぁ!!!』

「……。」

「……。」

「……。」


……敵の武将まで黙ってしまった。



――――ブォォォォォ……


「全軍撤退、撤退!!」

敵陣から鳴り響く法螺貝の音と、撤退の声。




「……。」

「あ、じゃあ撤退なんで……。」

「あー……、戦いの雰囲気ぶち壊してすんませんでした。」

「こちらこそ、紅氷柱って呼んじゃって……なんかすみませんでした。」

「ぶふっ」



スパーン!


戦の喧騒も収まり、辺りの砂煙も晴れた広い戦場に、長の頭に張り手をかました鮮やかな音が響いた。






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