長編 | ナノ
壊れた襖の応急処置をし、殴り飛ばされた幸村様を拾って上田に帰ると、長がにやにやして城門で待っていた。気持ち悪い。
「おかえりーお二人さん。」
「お、お二人さんとは、破廉恥な……!」
「何がだ。」
長は相変わらずにたにた私を見ている。気持ち悪い。
そんなに私のことが好きなのか……。やはり、戦の前に言っていたことは――
「だから違うって!」
……心読まれた。
「じゃあなんでさっきからニヤニヤしてるんだ。」
「ふふ……何ででしょうか、“紅氷柱”さん。……ぶはっ」
笑いをこらえきれず吹き出す長。
“べにつらら”? 何のことだ。
幸村様も、ぽかーんとしてしまっている。
「いや、さっき偵察に行ってたやつが帰ってきてさ。今回の戦のことがどんな風に他国に伝わってるかっていうのもなんとなく聞いてきてくれて。そしたら、べ、紅氷柱って……んふーーー!!」
「だから、紅氷柱ってなんだ。」
「“真田の忍に新たな脅威在り。若虎と同じく紅い気を纏いながらも、その技は冷たく鋭い。まるで、氷柱のよう”」
「え、私のことか、それ。」
「そう。で、今回の戦に興味持った奴らの間で、お前“紅氷柱”って呼ばれてるってさ(笑)」
「(笑)って絶対馬鹿にしてるだろう!やめろ!そのにやにやした顔やめろ!」
「……。」
「幸村様までそんな顔しないで!え、なんで、そんなにダサい?」
「ダサいっていうかさ……中二臭くね?」
「うるさい!闇の力纏ってでっかい手裏剣持ってる長に言われたくないですー。ってか中二ってなんだ。」
今後この通り名をネタにされ続けることになるとは……
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