長編 | ナノ


ここ最近、自分が忍であるということを忘れるんじゃないかというくらい、忍らしくない暮らしをしている。


最低限、基本的な任務はこなしているものの、現在は近隣諸国の動きも沈静化しており、私がこちらに来てからはまだ一度も戦に出ていない。


それに加えてあの主だ。
私たちのことをまるで親しい友人のように扱うから、そりゃ緊張感も薄れる。


長なんて、友達どころか最早オカンだ。
里にいた頃は“猿飛佐助”のあんな表情を見たことがなかったから、内心かなり驚かされた。


だって、早朝一人で台所に入っていったかと思えば、団子を作っていたから……。
幸村様と食べる甘味は城下の店で買って来たものだとばかり思っていたのに、まさか手作りだったとはびっくりだ。



ただ、はじめこそは主との距離感に戸惑ったものの、自分はすんなりと受け入れられたのだと思う。
今まで、任務として潜入しているわけでもない限り、人と他愛もない話をすることなんて無かったが、幸村様相手だと自然と言葉が出てくる。不思議だ。



熱血過ぎて頭も冷静とは程遠いのかと思いきや、やはりそこはさすが人の上に立つ者。
要所要所ではかなり物事を冷静に見ていることに最近気付いた。
それと人の使い方、甘え方がかなり上手い。これはきっと無意識のうちにやっていることなので、もはや才能とも言える。



こんな風に、見た目と中身の違いであったり、ころころと変わる表情と雰囲気も、下の者たちを惹きつけ、心を開かせる要因なのだろうと感じている。



こんなに平和ぼけていると、あっさりと刺客にでも殺されてしまうような気がして。けれど、ここの忍として死ぬというならそれも悪くないかもしれないなんて思っている私は、早くもここの主に相当絆されているのだろう。









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