長編 | ナノ
そんなこんなでツン太と手合わせすることになり、幸村様と長にも立ち会ってもらうことになった。他にも見物人が続々と集まり、道場の入り口は人だかりになっている。
「なまえ〜。道場壊すなよー。修理するのどうせ俺様なんだから。」
「幸村様じゃないんだから壊しませんー。」
「なぬっ……!?」
「…じゃあ、そろそろやりますか。準備はいい?」
「はい。いつでも。」
「よーし。」
「両者、構え!」
幸村様の声で、忍刀を構えるツン太。
私は刃の付いていない刀、つまり柄(つか)の部分だけを手に持った。
武器として成り立っていないものを構える私に、不審げな顔をするツン太。
幸村様もいぶかしげな表情を浮かべるものの、さも当然のように柄のみを持つ私を見て、試合の開始を告げた。
「はじめ!!」
―――カキィィン!
忍特有の速さで、瞬時に間合いを詰めてくる。私は柄で振り下ろされた刀を受け止めた。
「…どういうおつもりですか。」
「まぁ落ち着きなって。刃はいざという時のためにとっとくってね。」
「甘く見ないでいただきたい…!」
―――ザッ!
一歩飛び退き、回転しながら薙ぎ払うように振られた刀をかわす。
「そんなんで、甘く見るなっていう方が無理な話……!」
身を屈め、低い姿勢からバネを生かして相手の懐に突っ込む。
ツン太は正面で受け止められると思ったのだろうが、甘い。
―――ドォォォォォン…!
騒然とする周りの人間。
カランカラン、と忍刀が転がる音。
……壁にめり込むツン太。
「えぇぇ、何あの馬鹿力。」
「さすが…!さすがなまえ!!」
勝負あったかと思われたとき、私の眼前に何かが迫って来た。
「うわああああ」
―――キィィィン!
―――ドスッ…
咄嗟に打ち返したのは、クナイ。そのままそれは向うの壁に突き刺さり、そのすぐ横には悔しそうなツン太の顔があった。
「なんと!氷の婆娑羅か!!」
そう。咄嗟にクナイを打ち返すときに、柄だけだった刀には氷の刃が作り出された。
これが私の婆娑羅。刀が柄だけだったのは、この刀の刃は氷だからというわけだ。
「勝負あり!!」
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