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墨色の布の端から隠し切れなかった、金色の髪が陽射しにきらきらと輝く。


見るからに異人風の姿をした青年は、ぴたり、と足を止めた。


「蓮(れん)」

「……どうした? ヨキ」


その後ろを歩いていた、こちらもまた同じような洋装をした青年、蓮が鋭く聞き返した。こちらも顔が見えないように墨色の布を深く被っている。



ヨキが妙にたどたどしい言葉で囁くように告げた。


「血の匂い、する」

「……どこからだ?」

「こっち」


こくんと頷いたヨキが足で地面を蹴り、駆け出した。かろうじて見える片目を見張ると、溜め息をついて、蓮はヨキの後を追った。












風のように駆けていたヨキがようやく、足を止めたのは、古びた木製の巨大な橋の上だった。静かに歩いただけでも、ところどころ、ぎしぎしと不穏に軋む。


身軽に手すりの上までひょいと飛び上がると、ヨキは下を見下ろした。


薄暗い深い川の水面に、漂う小舟がひとつ。橋の下に隠れるようにして、浮かんでいる。



すぐに追いついた蓮が、ヨキに並んで下を覗いた。


「――あの小舟か?」

「ん。あれ」


そうか、と頷いて、手すりを乗り越えて、蓮は橋の下に消えた。


片足をついて着地すると、小舟が小さな波を立て、揺れる。蓮は静かに片膝を立てて、屈み込んだ。



――筵(むしろ)の掛けられた、何か。


躊躇うことなく、蓮は筵を剥ぐ。


その何かは、まだ幼い顔立ちをした少年だった。血の気のない顔色は蒼白で、ぐったりとしている。
賊にでも襲われたのか、右肩から袈裟掛けに斬られている。傷は大して深くないようだが、大怪我には違いない。


そして、何故か手当てが施されていた。


少年の口元に手をやると、微かに息をしている。蓮は少年を肩に担ぐと、小舟の縁を蹴って橋まで跳躍した。



「……おかえり」


蓮がゆっくりと地面に下ろすと、ヨキが屈み込んで少年の頬に触れた。冷たい、と一言呟き、身体を起こした。


「蓮。どうするの?」

「……」


蓮は感情の読めない目を少年の血の気のない顔に向けた。余程長い時間、あの小舟の上にいたのだろう。かなり衰弱しており、体温も下がっている。


……このまま放っておけば、確実に命を落とすだろう。



「蓮?」と沈黙したままの蓮に心配そうな声色でヨキは問い掛ける。


それに応えようと蓮が口を開きかけた、その時―――



「テメエら!」とまるで叫んででもいるかのような怒鳴り声が響いた。








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