ポッキーの日


 今日のおやつはポッキーだった。
 お母さんいわく、
「だってポッキーの日だっていって安売りしてたんだものー」
 ということらしい。いやそれは別にいいんだけれども。
「ねえねえアカネちゃん、ポッキーゲームやろうよー」
 そう言いながらポッキーを一本くるくる回しているタツキの姿が目に入ってきて、つい眉間にしわが寄ってしまった。まあ私より先に食べているのは最早いつものことだからしょうがないとして、
「……なにそれ」
「え?アカネちゃんポッキーゲーム知らないの?こう、ポッキーを二人で端と端から食べていってね……」
「いやそういうことじゃなくて」
 なんで私があんたとポッキーゲームなんかしなきゃならないんだ。
 さらにこの日は、
「アカネちゃんとポッキーゲームだなんてタツキには百年早い。アカネちゃん、僕とやろう」
 本気なのか冗談なのかわからない様子でそんなことを言うイズミくんと、
「すいませんお母さんこんなにたくさん頂いちゃってー」
 とポッキーを一箱(といってももちろん段ボール一箱などではなく普通の小さな箱だ)もらって喜んでいるシズカさんの姿まであった。ていうかお母さんずるい、なんでシズカさんだけ箱ごとなの。
「なんであんたたちまで来てんのよ……」
 私はため息をついた。やれやれ。今日はにぎやかだ。
「ほらアカネちゃんも早くこっちにおいで」
 ほら早く、とタツキが自分の膝を叩いている。確かに早くしないと私の分はなくなってしまうかもしれない。私は急いでその定位置におさまることにした。
「アカネちゃんとがだめならシズカさんとやろうかなあ、ポッキーゲーム」
「それは金輪際無理だな。僕が許さないし」
「え?何?ポッキーくれるの?」
「ちょっと、もうあとこれだけしかないじゃない」
 ポッキーはすでに残り半分以下になってしまっていた。



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