帰り道


 あれ?タツキだ。
 帰り道、私は見覚えのあるひょろ長い人影を見つけた。外でタツキに会うなんて珍しいなと思って、そう思った自分に軽いめまいがした。いかにタツキが私の家に入り浸ってるかということだ。
「あ、アカネちゃんだー。今帰り?」
 向こうも私に気づいて手を振りながら駆け寄ってきた。
「うん。タツキは?買い物?」
「そうだよ」
 並んで歩きながら私はタツキの提げた袋を見下ろした。スーパーの白いビニール袋から長ネギが飛び出していていかにもといった様子だ。だがそれを差し引けばタツキの見た目はそう悪くないものだ。毎日ぐうたらしているくせになぜか着ているものは高そうないいものだし何気にお洒落だし。背も高いし。中身を知らなければむしろカッコいいほうなのではないだろうか。あくまで中身を知らなければの話だけど。
 そんなことを思いながらふと見上げると、にこにこと笑うタツキと目が合ってしまった。考えを見透かされたような気がして一瞬どきりとしてしまう。
「なによ」
「ううん。ただ、アカネちゃんは今日も可愛いなあと思って」
「は?」
 いやちょっといきなり何を恥ずかしいこと言ってるんだこいつは!私は思わず逃げるように早足になった。
「あれ?アカネちゃんどうしたの?待ってよー」
「やだ」
「えー、まってー」
 そうこうしているうちに気が付けば家にたどりついていた。やれやれと思いながら玄関を開ける。
「ただいまー」
「ただいまー」
 ん?
 ただいまの声が重なって、私は隣を見た。するとタツキが普通に靴を脱いで家に上がろうとしている。
「……いや、なんでタツキまで一緒に帰って来てるのよ」
「え?だって」
「あら、二人ともお帰りなさい」
 きょとんとして何か言いかけたタツキの声に重なるように声がして、奥からお母さんが顔を出した。タツキはパッと私より先に上がりこむと提げていた袋をお母さんに渡している。
「お母さんただいまー、おつかい行ってきたよ」
「ありがとうタツキくん」
「いや、ちょっと」
 お母さんってあんたのお母さんじゃないし。ていうかおつかいって、お母さんも何普通にタツキに頼んでるの。
「じゃ、これはごほうびね」
「わーい!ありがとう!」
「…………」
 二人とも私をよそに何やら楽しそうだ。私は何だかグッタリしてしまった。



戻る
- ナノ -