十三夜


「あれ?りょーちゃん何やってるの?」
 こないだ伊東さんに買ってきてもらった三方にこれもまたさっき伊東さんに買ってきてもらった月見団子を盛り付けていると、後ろから桂木さんが声を掛けてきた。
「なにって、お月見の準備ですよ。調べたら今日が十三夜だそうなんで」
「十三夜?」
「ええ。お月見の日には十五夜と十三夜があって、どちらか片方しかやらないのは『片見月』といってあまりよくないといわれてるそうなんですよ」
 俺はススキを花瓶にさした。まあこんなもんだろう。
「へー。知らなかったなあ。ていうかなんでりょーちゃんそんなこと知ってんの、俺より若いのに」
「あー。そうですね、たぶん親父の影響でしょうね。なんか妙に昔の風習とか詳しい人で」
「ふーん。じゃありょーちゃんが時々妙にジジくさいのもそのせいなのかな」
「え?俺ジジくさいですか?」
「いや、ジジくさいっていうか昔の人っぽいかな。そうやって昔の風習とかやたら詳しかったり、おばあちゃんの知恵袋みたいだったり」
「はあ……」
 昔の人っぽい、か。そう言われてみればまさに親父がそんな感じだったなと思い出した。ジジくさいのはちょっと嫌かもと思ったけれども、思わぬところである意味親父に似ていると言われるのは、少し照れくさくて、嬉しかった。



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