なんだかんだいって


「なっちゃんおはよう!ハッピーハロウィン!お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ〜」
 朝、教室に入るなり駆け寄ってきた星野はやたらうるさかった。いやうるさいのはいつものことだが、今日はハロウィンだからだろうかいつも以上にうるさい。
「…………」
 私は何か言い返す気力もなくして溜め息をついた。
「もうなっちゃん、朝から元気ないなあ。溜め息つくと幸せが逃げるよ?」
「……うるさいわね」
 私はもう一つ溜め息をついてしまった。まったく、誰のせいで朝からこんなにぐったりしてると思ってるんだ。
 私はカバンを開くと小さなビニール袋を取り出した。ハロウィンっぽいオレンジ色。中身はクッキーが何枚か。
「ほら。これあげるからおとなしくしなさい」
 私はそれを星野につきつけた。星野は一瞬驚いた様子でそれを受け取ると途端にまたぱあっと笑顔になった。
「わーい!なっちゃんからお菓子もらっちゃった!」
「だから静かにしなさいって言ってるのに……聞いてないわね」
 まあ確かにお菓子をあげたところで星野がおとなしくなるわけでもない。かえってうるさくなってしまうだろうことも予想の範囲内だ。
「あ、僕今日はお菓子持って来てないからさ、なっちゃんは僕にイタズラしちゃっていいからね。ていうかイタズラしてくれる?いやん、言っちゃったエヘヘ」
「なにバカなこと言ってんの?」
 しかしなんだかんだいってしっかり用意してくる私も私だよなあ。そんな自分にも半ばあきれながら、私はまた溜め息をついてしまった。



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