後片付け


「うわあ、派手にやらかしたねえ」
 廊下に散った窓ガラスを掃き集めていると離れたところから声をかけられた。伊東さんだった。
「どうしたのいったい」
「水鉄砲で殺されかけました」
 正直に答えると伊東さんに笑われた。いや、そこ笑うところじゃないだろ。
「よかったじゃない、ずいぶん気に入ってもらえてるみたいで」
 は?
「いや、どこがですか。むしろ知らないうちに何か恨まれてでもいるんじゃないかと思うんですが」
 そんな、気に入られてるだなんて、どこをどうしたらそんな言葉がでてくるんだ。
「でも実際殺されてるわけじゃないじゃない。あれはからかって遊んでるんだよ。ちょっと過激な愛情表現ってやつ」
「そうでしょうか」
 俺は溜め息をついた。決して伊東さんの言うようなことではないだろうと思った。俺と桂木さんの間にはもっとどこか冷ややかなものが常にある、そんな気がする。



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