謎だ。


「!?」
 朝、学校に着いて、ぼーっとしながら下駄箱を開けると、上履きの上に封筒が乗っていたものだから、あたしは驚きのあまり思わず下駄箱を閉めてしまった。
 え、何だったんだ今のは……。
 下駄箱に封筒といえばラブレターか果たし状で、どっちにしろこれまで自分には全く縁のなかったものだ。
 あたしは再び、今度はそーっと下駄箱を開けてみた。まるで中に爆発物でも入っているかのように。するとやっぱりさっきのは見間違いでも幻覚でもなく、白い上履きの上には白い封筒が乗っていた。葉書くらいの大きさの横長の封筒が、封をしたところを上にして置いてあって、差出人の名前が見えた。
「カっ……」
 カンバヤシ!?
 あたしはまた下駄箱をバンと勢いよく閉めてしまった。勢い余って思った以上の大きな音がしてしまい、あたしは慌てて今さらながらに辺りを確認した。幸いなことに辺りには誰の姿も見えない。というのも、住んでる場所の関係で、あたしはみんなより少し学校に着くのが早いのだ。
 ていうかカンバヤシ!? なんでカンバヤシが!? やだどうしよう意外! 手紙とか超意外!!
 カンバヤシ、というのはあたしと同じクラスの男子だ。声が大きくて動きも大きくてなんていうか目立つ。いつも一緒にいる男子がひょろりと背の高い子で、へたすりゃその陰に隠れてしまいそうなのに負けてない。むしろ勝っている。
 ただ、そんな話を友達にすると、そうかなあ、とか返されてしまったりする。謎だ。
 謎といえばもう一つある。カンバヤシのことを考える時、あたしの中ではなぜかカンバヤシのことをカンバヤシと呼び捨てにしてしまっていることだ。口に出す時、例えば会話の中に出てくる時なんかはちゃんとカンバヤシくん、とか言うんだけど。うん、謎だ。
 あたしは一つ深呼吸して、もう一度下駄箱に手を伸ばした。封筒の中身がたとえラブレターでも果たし状でも、正々堂々、正面から向き合うつもりで。



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