ザ・告白


「好きです! つきあってください!」
 彼はそう言って深々と頭を下げると握手を求めるようにあたしに手を差し出してきた。
 校舎の裏に呼び出されるといえば、告白かシバかれるか(だと、友達に言われた)で、彼が人をシバくなんてことはまずあり得ないからつまりはそういうことなんだろうと思ってはいたけれども。
 差し出された彼の手は震えていた。やっぱり大きな手だな、と思った。前、何かの話の流れで手の大きさ比べをしたことがあった。身長も手足もなんだかひょろ長い印象の彼は指までひょろ長い気がした。
 深々と頭を下げている彼の表情は見えないけれどもきっと涙目になってるんだろうと思った。彼はよく泣く。足の小指をぶつけたといっては泣き、ゲームで負けたといっては泣き、映画で感動したといっては泣き、そして、人の痛みや悲しみを思って、泣くのだ。
 そんなことが手に取るように簡単に分かってしまうのは単に彼が分かりやすいからというだけではなく、それだけあたしが彼を見ていたということなのだろう。
 あたしは彼の手を取った。片手じゃ足りない気がして両手で握った。彼の手はひんやりしているのに汗ばんでいた。前、手の大きさを比べた時と同じように。
 ばっと顔を上げた彼は予想通りの半泣き顔であたしは思わず笑った。それにつられるように彼も笑ったけれども同時にぼろぼろとマジ泣きし始めてしまった。
 はい、とあたしは答えようとした。あたしも好きだと言おうとした。けれどもなぜだか急にうまく声が出せなくなって、あたしはただ、何度も何度もうなずいたのだった。



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