なんでもない


 休み時間、ぼくは友人となんでもない話をする。ぼくは自分の席に座っていて、彼はぼくの机の上にこしかけている。
 彼は明るくてオーバーアクションで話も面白い。ぼんやりしているぼくを時々馬鹿にするようなこともあったけれどそれはそれで憎めなかった。
 ぼくと彼は一年のときから同じクラスで彼はぼくが高校に入って最初にできた友人だった。今でもよくつるんでる一番の仲良しだといってもいいだろう。
 ぼくらはなんでもない話をする。明日には忘れてしまっているような。なんでもない時間を過ごす。明日には忘れてしまっているような。
 休み時間の教室はざわざわとしていた。みんな思い思いに過ごしている。
 一瞬、すべてが遠くなった気がした。ぼくと周りとの間にいちまい壁ができた気がした。
 こんなふうに過ごしていられるのも今のうちだけだと誰かがどこかで言った気がした。いずれ君はすべてを失うんだよ、今のうちに普通であることの幸せを心に刻んでおくんだと、誰かがどこかで言った気がした。
 誰なのかは分からなかった。けれどもそれはよく知った誰かのようだった。
 またぼーっとしてる、と友人に笑われた。一瞬感じた何かは消えて、ぼくはまたなんでもない日常にかえった。



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