チャンネル
「おーい。おーいってば」
先程からずっと眉間にしわを寄せて何やら考え込んでいる様子の彼女の目の前で、私は手をひらひらと振ってみた。
「えっ?ああ、なに?」
彼女は今私に気付いたかのような顔で私を見た。さっきから私ずっとここにいたんだけど。
「そんな険しい顔してどうしたの?何かお悩み?」
そう訊いてみると、彼女はうーん、と小首を傾げて答えた。
「いや、なんか今日はどうもうまくチャンネルが合わなくてさあ」
「は?チャンネル?」
私はぽかんとした。チャンネルって何のチャンネルですか。
けれども彼女はそんな私の様子に構わずさらにぼんやりとつぶやいた。
「久し振りにちょっと砂漠まで行ってみようかと思ったんだけどなー」
えーと。砂漠って。
「いやすみませんわけがわかんないんですけど」
けれども彼女はそのまま再び険しい顔で黙り込んでしまった。
「おーい、帰ってこーい」
そして私もまた彼女の顔の前で手をひらひらさせるのだった。
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