ジョニーとナタリー
「おはよう」
朝、私が台所に行けば、ジョニーはもうテーブルについていて新聞を広げている。
「おはよう」
ジョニーは新聞から目を離さずに言う。そのわずかにくぐもった低い声が私は大好きだ。
チーン、とトースターの軽やかな音がする。ナタリーが二枚のお皿に一枚づつこんがり焼けた食パンを乗せてジョニーと私の前に置いた。
「おはよう」
「おはようナタリー。ねえナタリーのは?」
「あたしは後でいいわ。だってあれ2枚しか焼けないじゃない」
「そっか」
私は食パンにたっぷりバターをぬった。ジョニーも新聞を脇に置いて私がバターをぬり終わるのを待っている。
その時私は気がついた。
「ジョニー」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
けれども私はそれについて何も言わなかった。
ジョニーのYシャツが不自然に汚れていた。すごい、今時口紅なんてベタすぎる。
「……ナタリー」
「なあに」
今度はナタリーを見た。ナタリーはにっこり笑顔で私を見た。あ、なんだ、ナタリーはわざとジョニーのYシャツを汚れたままにしてるのか。
「なんでもない」
私もにっこり笑った。
「じゃあ、行ってきます」
食パンを食べ終わると私はそう言って家を出た。
「行ってらっしゃい」
クマのぬいぐるみとウサギのぬいぐるみが、笑顔で手を振っていた。
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